【奨学生】夏の研修交流会を盛岡で行いました

 

 (公財)かめのり財団では毎年9月に、大学院奨学生の研究の進捗発表と相互交流の促進を目的とする研修交流会を行っています。今年は、2025年9月1日(月)~3日(水)の3日間、盛岡市内にて実施しました。参加した奨学生3名のレポートをお届けします。

 


 

 

かめのりでの最後の夏の研究交流会

 

上智大学文学研究科新聞学専攻

博士後期課程3年 麻俊凡(マ シュンボン)

 

 

 今年の夏の研修交流会は盛岡で開催されました。岩手県に行ったことがなかったので、自然や文化を楽しみに、ワクワクしながら出発しました。

 

 一日目はタイムキーパーを担当しました。時間管理に集中していたため、あっという間に一日が過ぎた印象でした。夜はみんなでわんこそばに挑戦しました。ほとんどの人が初体験で、店員さんが次々とそばを入れてくれるので、自然と盛り上がりました。グエンさんの発表では、ベトナムの子どもがゲームを通じて学校で交流できたという話が紹介されました。その流れから、夕食後に奨学生同士でトランプをすることになりました。最初はババ抜き、続いてワイヤンさんと宋さんの提案で、私も初めてインディアンポーカーを体験しました。ゲームを通じて笑い合ううちに、みんなの距離が一気に縮まっていきました。

 

 二日目はいよいよ自分の発表でした。3回目だったので、少し余裕を持って話すことができました。理事長の宮嶋さんや上原先生から色々と質問をいただき、自分の研究を続ける自信につながりました。また、岩手県立大学の学生たちとも交流でき、地元の学生の考え方を知ることができたのは新鮮でした。案内もしてもらい、本当にありがたかったです。夜は豪華な焼肉と冷麺。特に奨学生女子4人で集まったときは、ちょっとした女子会のようになり、ゴシップ話で大盛り上がりしました。

 

 三日目は伝承園で昔話を聞きました。方言混じりで少し難しかったけれど、東北文化に触れる貴重な体験でした。こんにゃくと豆腐の昔話は今でも印象に残っています。色染め体験では、自分の作品を先生に忘れられるというハプニングがありましたが、そのおかげで逆に濃く染まり、いい仕上がりになりました。完成した作品は帰国のときに母に渡したところ、とても喜んでくれて嬉しかったです。

 

 今回の研修では、理事長のダイバーシティに関する講義や、OGの楊さんの博士課程での体験談も強く印象に残りました。実体験に基づいた話は、自分の将来を考えるうえで本当に参考になりました。

 

 帰りの新幹線で宋さんが「会ったのは数回だけなのに、この交流会でこんなに親しくなれるのって不思議」と話していて、本当にその通りだと思いました。かめのりの交流会だからこそ作れるファミリー感だと思います。

 

 三日間はあっという間でしたが、学びも交流も盛りだくさんで、最高の思い出になりました!

 

 

 

 


 

 

夏の研修交流会を振り返って ―学びと成長の記録―

 

立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科

博士課程前期課程2回生

I Wayan Yuuki (イ ワヤン ユウキ)

 

 

 研修交流会を通じて、異分野の研究に触れることができ、とても貴重な体験となりました。昨年の交流会でも多くの刺激を受けましたが、今回は特に、奨学生の皆さんが国境(海)を越え、数えきれない困難を乗り越えながら研究に取り組む姿に強く心を打たれました。誰もが悩みや苦労を抱えていますが、それを力に変え、自分だけの個性へと昇華させて輝く姿はとても印象的で、昨年、西田先生がおっしゃっていた「修羅場(苦労)をどれだけ経験したかで、ヒトは成長する」という言葉を、今年改めて実感する時間となりました。

 

 私は心配性で、不安に駆られることも多く、時に社会の枠の中に自分を押し込めて安心感を得ようとすることがあります。けれども今回の交流会を通じて、「必ずしも最短の道を行かなくてもよい。遠回りしても、時間をかけてもよい」と気づきました。むしろ、その過程の中でしか出会えない出来事やヒトこそが、自分の「味」となり、強みになっていくのだと感じました。さらに、宮嶋理事長の「自分とは異なる相手の良さや特徴を見出し、それに自分の能力を加えることで、新たな表現や形が生まれる」という言葉も深く心に残りました。相手を理解するだけでなく、自分の力をそこに重ね合わせて初めてオリジナリティや発展性が生まれる、その気づきは、研究だけでなく人生全体の指針になると感じました。

 

 かめのり財団の奨学生に採用いただいてから参加した2回の夏の研修交流会を振り返ると、まるで前編と後編のようにつながっているように思います。前編を経験したからこそ、後編をより深く楽しみ、学びを得られたのだと感じています。

 

 以下の2枚は、今回の交流会の一場面です。左の写真は発表のときの様子で、こんなに身振り手振りを交えて話していたのかと、自分でも新しい発見でした。そして今回の大きな学びの一つは、「研究には必ず“伝えること”が伴う」ということです。研究は自己満足で終わってはいけません。時間や労力、資金を費やす以上、社会に還元し、何らかの価値を生み出していく必要があります。どれだけ素晴らしい研究であっても、一般の人に伝わらなければ意味がない。議論を通じて言葉のキャッチボールができて初めて、良い発表であると感じました。

 

 右の写真は、染体験で完成した布たちです。一つひとつ異なる柄がとても美しく、仲間それぞれのアイデアと独創性がつまった作品だと思い、紹介させていただきました。この写真が象徴するように、今回の交流会は「学びを自分の言葉で伝えること」と「多様性の中から新しい価値を見出すこと」を体感する機会でした。

 

  

 

 


 

 

夏の研修交流会報告レポート

 

早稲田大学社会科学研究科

修士1年 宋在洹(ソン ジェウォン)

 

 

 初めての研修交流会の場所は、初めての岩手県でした。経験したことのない初めてだらけの環境で胸を躍らせていた私にとって、今回の3日間はあっという間のものでした。

 

 初日は、盛岡駅前のアイーナ内にある岩手県立大学の一室をお借りし、4名の奨学生による発表が行われました。全員異なる分野の研究を行っていますが、初学者にも伝わるように発表してくださり、とても興味深く聞くことができました。また、帯同していた宮嶋理事長からも講義をしていただきました。多様性の大切さを理論的に説くばかりではなく、ご自身の実際の経験に沿ってお話しいただき、短い時間ながらも大変心に残るお話でした。そして、夕食はわんこそばをいただきました。岩手名物でもあるわんこそばをいただくにあたって、必ず100杯食すという意気込みで臨みましたが、これが想像以上に大変で何度も心が折れかけました。しかし、周りの奨学生たちの励ましも相まって、目標を超える101杯を食すことができました。

 

 二日目は、初日に続いて残りの奨学生による発表が行われました。この日に私の発表もありましたが、皆さん熱心に聞いてくださったこと、多くの質問をいただけたことがとても嬉しかったです。また、午後は当財団の評議員でもある岩手県立大学の上原先生の学生たちが盛岡の鉈屋町を案内してくれました。この学生たちは初日から発表を見学しており、彼らのおかげで予定にはなかった盛岡観光ができてとても幸運でした。優秀なガイドで盛岡の美しい歴史について教えてくださった学生の皆さんにこの場をお借りしてお礼申し上げます。

 

 最終日は、日本の原風景が残る遠野に場所を移し、観光を行いました。とおの物語の館では語り部による公演を聞きました。方言による昔話の語りは少し難解な部分もありましたが、それ以上に方言が歌のように心地よく、どこか懐かしさを覚える不思議な空間でした。次の伝承園では藍染め体験や、近くのカッパ淵の散策等を行いました。残念ながらカッパには出会えませんでしたが、遠野の風光明媚な景色や物語がもたらしてくれた雄大さに浸れた一日でした。

 

 総じて、多くの学びと出会いに満ち溢れた3日間でした。東京に戻った最終日には麻さんと曹さん、トゥイリンさんと新宿で食事もしました。岩手で得た学びや出会いを思い出のままに留めるのではなく、この先にも活きる経験として活用できるよう、これからも精進していきたいです。