【奨学生】夏の研修交流会を鹿児島で行いました

 (公財)かめのり財団では、大学院奨学生の研究発表と相互交流を目的とした研修交流会を毎年開催しています。2026年度は9月9日(水)から11日(金)までの3日間、鹿児島県内で実施しました。鹿児島市内での研究発表に加え、指宿や知覧を訪れ、現役奨学生7名と、当財団評議員で岩手県立大学准教授の上原史子氏のゼミ生2名が参加しました。研究発表や意見交換を通じて交流を深めた今回の研修交流会の様子を、参加者4名のレポートでご紹介します。

 


 

 

鹿児島での夏の研修交流会―出会いと新たな気づき

 

大阪大学大学院人文学研究科言語文化学専攻

博士後期課程3年 NGUYEN THI LINH (グェン ティ リン)

 

 鹿児島で過ごした三日間は、自分の研究を改めて見つめ直すとともに、これまであまり触れる機会のなかった鹿児島の人々や歴史、暮らしについて知る貴重な機会となりました。

 

 初日は、在日ベトナム人の子どもの教育経験に関する研究を発表しました。発表の準備を通して、教育経験という概念について改めて考えることができました。具体的には、教育経験を子どもの生の軌跡の中に位置づけ、学校や家庭、人との関わり、さらには家族の移住の軌跡を通して、時間の中で形づくられていくものとして、より明確に捉えられるようになりました。また、奨学生の皆さんの自己紹介と発表を通して、さまざまな分野について新たな視点に触れることができました。中でも、心に残ったのが、プロスポーツ選手から研究者へと転身した朴さんのお話です。私たちがいつの間にか当たり前だと思っている進学や就職といった人生の道筋以外にも、実際にははるかに多様な選択肢があることに改めて気づきました。

 

 もう一つ強く心に残ったのは、東日本大震災の記憶をめぐる交流の時間です。家を失ったこと、その後の生活を一から立て直したこと、そして今も残る心の傷について直接お話を伺い、これまでベトナムのメディアを通して目にしてきた、人々が秩序を守り、冷静に行動する姿の背後に、一人ひとりの具体的な経験があることを実感しました。特に印象に残ったのは、村上さんから伺った、家族の人数にかかわらず「一世帯につき大根半分」という決まりで食料が配られたというお話です。このお話を通して、ルールを守ることと、それぞれの状況や必要に応じて柔軟に対応することとのバランスについて考えさせられました。

 

 二日目からは、より身近なところから鹿児島を知る楽しさも感じるようになりました。朝食でいただいたさつま揚げや味噌汁、ほうじ茶、そして滞在中にさまざまな場所で目にした「薩摩」という言葉がきっかけとなり、鹿児島の歴史や文化にも興味が広がっていきました。

 そして最終日、体調の都合で砂むし温泉を体験することはできませんでしたが、施設で働く年配の女性と偶然お話しする機会があり、その親切で温かな応対から、鹿児島の方々の温かさを直接感じることができました。

 

 今回の三日間で出会った人々、聞いたお話、そして実際に経験した一つひとつの出来事は、鹿児島での忘れられない思い出として、これからも心に残り続けると思います。

 

 

 


 

 

かめのり大学院留学アジア奨学生

鹿児島研修会報告レポート

(2026年9月)

 

横浜国立大学大学院国際社会科学府国際経済法学専攻

博士後期課程2年 朴 亨哲(パク ヒョンチョル)

 

鹿児島で見つめ直した研究と歩み

 9月9日から11日まで、かめのり財団の研修会に参加し、鹿児島を訪れました。羽田空港で皆さんと合流して出発し、鹿児島中央駅近くのホテルに滞在しました。短い旅でしたが、日頃の研究で抱いている問いを皆さんと共有し、自分の研究とこれまでの歩みを見つめ直すことができました。

 

 初日は、奨学生による自己紹介と研究発表が行われました。私は最初の発表者だったため、少し緊張しましたが、準備した内容を落ち着いて伝え、無事に終えることができました。特に心に残っているのは、発表後にいただいた質問や助言です。一人で研究していると当たり前のように捉えていたことも、人に説明しようとすると、改めて考え、言葉を選ぶ必要がありました。質問に答える時間は、自分が何を理解し、何をさらに明らかにする必要があるのかを確かめる時間でもありました。日本語で考えを正確に伝える練習になるとともに、他者の視点から研究の目的や意義を捉え直す貴重な経験となりました。

 夕食には、皆さんと鹿児島の黒豚料理をいただきました。地元の料理を囲む食卓では、研究発表の場とはまた違った会話が生まれました。他の奨学生や谷本さんとお話しする中で、発表だけでは知ることのできなかったお互いの一面に触れ、少しずつ親しみが増していくのを感じました。翌日の午前中も奨学生の発表が続き、それぞれの研究に耳を傾けました。午後はホテルで論文研究を進めながら、ゆっくり休息を取りました。皆さんと学び合う時間と、一人で考えを整理する時間の両方を持つことで、日々の慌ただしさから少し離れ、自分のペースを整えることができました。夜に再び集まって囲んだ食卓では、前日よりも打ち解けて過ごすことができました。

 

 最終日の砂むし体験は、思いがけず昔の自分に出会うひとときとなりました。そこは、私が選手として活動していた約20年前にも訪れた場所でした。温かな砂に身を委ねると、当時の記憶がよみがえってきました。かつて選手として訪れた場所に、今は研究者として立っていることに、過ぎた年月をしみじみと感じました。私自身の生活は変わりましたが、その場所には記憶の中の風景が残っていました。長い年月を経て再び訪れた人が、自分の思い出に出会えること。そのことから、地域の伝統を守り続ける営みの大切さを感じました。

 その後に訪れた特攻隊に関する展示施設では、また異なる重みを持つ時間に向き合いました。隊員たちの写真や遺品、展示された零戦を見ながら、戦争の歴史の中には、一人ひとりの生活があり、これからの人生があったことを考えました。遺品を前にすると、戦争の犠牲が抽象的な数字ではなく、一人の人間の生として迫ってきました。国家の選択が個人の運命にどれほど深く、取り返しのつかない影響を及ぼすのか。そして、平和を守るための判断には、どれほど重い責任が伴うのか。これから研究を続けていく上でも忘れてはならない問いとして、心に残りました。

 

 鹿児島空港から帰路の飛行機に乗る際、今回の研修会で得たものの大きさを改めて感じました。鹿児島の文化や歴史に触れるとともに、自分の研究を見つめ直す視点、共に学ぶ仲間への理解、そして過去と現在をつなげて考える時間を得ることができました。こうした学びを支えてくださったのは、旅の見えない部分にまで細やかに心を配ってくださったかめのり財団の皆さんです。特に日程の準備から、私たち外国人奨学生が安全に、安心して参加できるよう、いつもそばで支えてくださった谷本さんに、深く感謝申し上げます。また、真摯なご質問と温かなご助言を通じて、研究を振り返る機会をくださった常務理事の河合さん、評議員の上原さんにも、心より御礼申し上げます。かめのり財団の奨学生としていただいている温かなご支援を胸に、今回の旅で得た学びを、これからの研究と日々の生活につなげていきたいと思います。

 

 

 

 


 

 

夏の研修交流会を終えて

 

岩手県立大学総合政策学部3年

山下 実桜

村上 姫菜乃

 

 この度私達は、聴講生としてかめのり財団・夏の研修交流会に参加させていただきました。研修会では、様々な学術分野の研究について知見を深めることができ、自身のこれからの研究に対する姿勢を学ぶ非常に有意義な機会となりました。

 

 院生の発表会に参加させていただくということで初めはついていけるか不安でした。しかし初学者にも分かりやすいプレゼンテーションや疑問に丁寧に回答してくださったことで先輩方の研究テーマへの理解が深まるとともに、深い洞察力と研究に対する真摯な姿勢を肌で感じることができました。また質疑応答の場面では活発な意見交換が行われており、圧倒されるとともに自身の知識不足や視野の狭さを痛感しました。

 一日目には「東日本大震災時の記憶と学び」について奨学生の皆様と対話をさせていただきました。上原先生の震災後のご経験と合わせて、被災直後の生活実態や沿岸部・内陸部の違いなどを説明しました。先輩方にとっては異国の自然災害の出来事にも関わらず、真剣に、過去を知ろうという姿勢をもって耳を傾けてくれたことが大変嬉しく思いました。

 三日目は知覧特攻平和会館を訪れる機会をいただきました。戦争がもたらした凄惨な現実を目の当たりにし、深い衝撃を受けました。鹿児島での研修前に私達は広島・呉を訪れ、戦争の悲惨さと平和の大切さを学びました。日本の戦争の歴史には様々な側面があり、それらを風化させず平和な社会を築くために自分たちができることを考える貴重な機会となりました。

 

 奨学生の皆様には気さくに声をかけていただき、ご自身の経験に基づく貴重なアドバイスもいただきました。普段なかなか交流する機会のない皆様とお話しできたことは、かけがえのない経験となりました。この研修会での経験を糧とし、卒業研究・就活に励んでまいります。このような貴重な機会をいただき、心より感謝申し上げます。