奨学生 8月の月次レポートを掲載しました
2026.09.14
かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。
かめのり大学院留学アジア奨学生
月次報告レポート(2026年8月)
北海道大学大学院 経済学院 現代経済経営専攻
修士課程 (M1)
黄 振峰 (コウ シンホウ)
夏の終わりには、いつも少し寂しく感じます。
僕は夏の空が好きです。どこまでも高く広がる青空、白い雲がゆっくり形を変えながら流れていく午後、夕方になってもなかなか消えない明るさ。空を見上げるだけで、世界がいつもより少し広く、時間にまで余白が生まれたように感じられます。けれど、晴れた空だけではありません。先ほどまで眩しいほど晴れていたのに、突然、大粒の雨が降り注ぐことがあります。傘を持っていない日は、慌てて近くの建物の軒下へ逃げ込み、雨が止むのを待ちます。屋根を打つ雨音を聞きながら、白い雨に覆われた景色をただ眺めます。急ぐことを諦めて、しばらく立ち止まる、そんな時間にもどこか惹かれます。やがて雨脚が弱まり、雲の切れ間から光が差し込むと、濡れた道路や木の葉は、雨が降る前よりも鮮やかに輝いて見えます。
しかし、八月の初めは、夏を心ゆくまで味わう余裕もなく、期末レポートに追われる日々でした。窓の外には眩しい光が溢れているのに、僕はパソコンの画面と資料の間を行き来していました。夕方の光が机の上まで伸びても、文章はなかなか終わらず、ようやく書き上げても、すぐに次の締切が待っていました。長いはずの夏も、課題に明け暮れている間は、驚くほど速く過ぎていきました。ありがたいことに、履修した科目はすべて最高評価の「秀」でした。結果を見た時は嬉しかったけれど、それ以上に、無事に半年間を終えられたことへの安堵の方が大きかった気がします。前期は授業に集中していたこともあり、卒業に必要な単位もほとんど取り終え、しばらく離れていた研究にもようやく戻ることができました。まだ報告できるほどの進捗があるわけではありませんが、研究の問いを少しずつ明確にしながら、先行研究を読み進めています。焦らず、一歩ずつ進んでいきたいと思います。
期末期間の合間に、小樽で開催された経済学のワークショップにも参加しました。普段は教科書や論文の中でしか触れない研究について、実際に研究者たちが議論している姿を見ると、自分がこれまで学んできたことの先で、新しい研究が現在進行形で生まれているのだと改めて感じました。夜の懇親会では、普段なかなか話す機会のない先生たちとも交流できて、いつもの大学生活とは違う空気の中で、良い時間を過ごしました。小樽から帰る前には、和菓子も買いました。誰かのことを思い浮かべながら、お土産を選ぶ時間は、思っていた以上に楽しかったです。
そして、今年の夏は、勉強や研究とは別のところでも、心が揺れることが多くありました。半年ほどの間、同じ自習室でよく見かけていた人と、少しずつ言葉を交わすようになりました。それまでは、同じ場所で何時間も勉強していても、話したことがありませんでした。いつの間にか、挨拶をしたり、短い会話をしたり、お菓子を渡し合ったりするようになりました。曇った日でも、ほんの何気ない笑顔で、世界が少し晴れたように見えてしまいます。考えてみれば、不思議なものです。誰かを想うことで、自分の心の深さを知ってしまいます。
かめのり大学院留学アジア奨学生
月次報告レポート(2026年8月)
大阪大学大学院人文学研究科言語文化学専攻
博士後期課程(D3)
NGUYEN THI LINH (グェン ティ リン)
1.研究状況について
8月は、ベトナムで開催された国際学会での研究発表に向けた準備と、実際の発表に取り組みました。今回の研究では、日本で暮らすベトナム人の子どもとその父親の経験を取り上げ、特に、父親自身の移住経験がどのように子どもに伝える教えとなり、日常生活の中で共有されているのかを検討しました。
発表の準備は、これまで収集してきたデータを改めて見直し、整理する機会にもなりました。父親との会話の記録と、ミンさんの学校生活や日常生活に関する記録を時系列に沿って整理しました。その上で、父親が日本で生活し、働く中で経験してきたこと、そこから生まれた考え、それをミンさんにどのように伝えているのか、そしてミンさんが父親の教えをどのように受け止め、自分自身が経験するさまざまな場面で用いているのか、という一連の過程に注目しました。
学会発表の準備と実際の発表を通して、異なる時期や場面で収集したデータのつながりを、これまで以上に明確に捉えることができました。今回の作業は、今後、博士論文のデータ分析をさらに進めていく上でも重要な一歩になったと考えています。
2.生活状況について
8月にベトナムへ帰国した際、家族と一緒にフエ、ダナン、ホイアンを旅行しました。フエを訪れるのは今回が初めてでした。フエは、ベトナム最後の王朝であるグエン朝の都が置かれていた場所です。今回の旅行では、フエ王宮やグエン朝の歴代皇帝の陵墓をいくつか見学しました。また、それぞれの史跡にまつわる話やこの地域の歴史、「フエ」という地名の由来などについても調べました。
特に印象に残ったのは、実際に歴史の舞台となった場所を訪れ、建物を自分の目で見ながら、それぞれの場所にまつわる歴史を知ることの面白さです。こうした形で歴史を学ぶことは、中学生や高校生の頃の歴史の授業よりもずっと興味深いと感じました。以前の私にとって、歴史は主に出来事や年代、人物の名前を覚えるものでした。しかし今回の旅行では、実際に出来事が起こった場所に立ち、自分が気になったことを一つずつ調べることで、歴史をより具体的で生き生きとしたものとして感じることができました。
今回の帰国でもう一つ意外だったことは、日本にある私の小さな家庭菜園のことです。ベトナムに滞在していた2週間、畑に水をやる人がいなかったため、ずっと心配していました。しかし、戻ってみると、ツルムラサキやハスイモ、ハイゴショウなどの野菜が、想像していた以上にたくましく生きていて、とても驚きました。今回の経験を通して、普段育てている野菜の生命力やそれぞれの植物の特徴を改めて知ることができ、家庭菜園の面白さをさらに感じました。