【報告】日本文化交流に向けての人材育成事業~日本庭園を通じて~ オーストラリア研修プログラム

 

 かめのり財団では2024年度に一般社団法人日本庭園協会の事業である「日本文化交流に向けての人材育成事業~日本庭園を通じて~」オーストラリア研修プログラムを採択し、若手庭師のオーストラリア派遣に助成しました。

 

 京都の株式会社曽根造園の若手庭師である水野貴士さんが初年度の研修生に選ばれ2月1日~2月28日までの約1ヵ月間に渡り、オーストラリアで研修しました。水野貴士さんからの参加レポートを掲載します。

 


報告:研修生 水野貴士

 

 

 日本庭園協会では2025年2月1日~2月28日までの一か月間、オーストラリア(豪州)研修プログラムを実施しました。これは、国際社会で活躍する若手造園家を育成するのが主な目的で、2023年にオーストラリア庭園評議会The Australian Garden Council(AGC)と覚書を交わし交流を再開しました。2024年にこの研修留学プログラムは日本庭園協会会員に向けて開始しました。

 

 研修の目的は大きく分けて二つあります。

 1.現地の生活習慣に触れながら造園関連の職場体験を行う。

 2.研修の事前準備として英語を習得し国際社会で活躍する若手造園家の育成。

 

 豪州ではシドニーを中心に造園会社3社、植物園3カ所、植物生産会社1社で研修をし、様々な体験を行いました。

 

 いずれの造園会社でも主に個人宅の庭園管理を担当し剪定や植栽などの作業を担当しました。作業の基本は日本とは大きくは変わりませんでしたが、特に印象的だったのは「急がず丁寧に作業する姿勢」です。日本では、効率やスピードを重視する考えが根付いていますが、オーストラリアの職人たちは植物の状態をじっくり見極め一つ一つの作業に思いを込めていました。焦らず丁寧に向き合うことで、自然と調和した美しい庭が生まれるのだと実感しました。

 

 植物生産会社の研修では世界中から集められた多種多様な植物を間近で見る機会を得ました。剪定作業では「クラウド・プルーニング」という手法を体験しました。これは日本の「玉散らし」に似ていますが、日本では上下左右に交差した枝を取り除くのに対し、オーストラリアでは絡まった枝もそのまま活かしながら整枝するという点で大きな違いを感じました。

 

 

 

 

 予定していた研修に加え、オーストラリアのラジオ番組に生出演するという貴重な体験もしました。番組を担当しているのは豪州庭園評議会の会長で著名な園芸家であるグラハム・ロスさんです。彼が司会を務める「ガーデン・クリニック」はリスナーの植物に関する悩みを解決する人気番組です。私はこの番組で豪州での研修プログラムについて紹介しオーストラリアの園芸や文化、日本との違いについて質問を受けました。

 

 更に以前から関心のあった「Goryu Japanese Garden」も見学しました。燈籠や飛石、州浜など日本庭園の伝統的な構成要素が随所に配置されモミジやハナミズキ、イチョウといった日本に馴染みのある樹木も多くみられました。しかし技術的な面で少し違和感を感じました。例えば、飛石の配置が人の歩くリズム「右足・左足の交互の流れ」を考慮しておらず自然な動線になっていないことが気になりました。

 

 どの研修先でも日本に対する関心が非常に強く日本庭園や樹木の剪定技術、日本独自の道具について質問を受けました。しかし、英語力や知識が十分ではなかったことでうまく伝えられず、もどかしさを感じる場面も多くありました。 

 

 

 

 

 

 将来の夢は日本庭園のすばらしさを世界中の人に知ってもらうことです。今回の研修で、自分の目で見て肌で感じた経験はかけがえのない貴重な財産になると期待しています。オーストラリアの造園と日本の造園を比較したときにオーストラリアの方が悪いと感じたことも含めてリアルな感想を伝えていくことで、海外で活躍したいと考える同世代や同じ志を持つ庭師たちの背中を押し、共に高め合っていきたいです。

 

 

 

 

 

2024年度かめのり財団国際交流事業助成 概要

 

事業名    日本文化交流に向けての人材育成事業 ~日本庭園を通じて~ オーストラリア研修プログラム

研修日程   2025年2月1日~2月28日

研修先    オーストラリア、シドニー

研修参加者  庭師1名

助成総額   501,808円