奨学生 10月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2023年10月)

 

 

お茶の水女子大学大学院・比較社会文化学専攻

博士1年・曹 怡(ソウ イ)

 

 秋の気配が漂い始める十月に入り、新学期も始まった。

 今学期は東洋絵画史、中国詩史など様々な授業を聴講し、専門分野外の知識を拡充したい。絵画史の授業で、「信貴山縁起絵巻」など具体的な作品を鑑賞しながら、絵巻など作品の特徴について勉強になった。特に、異時同図の描く手法が印象深い。同じ背景の元に、複数の時間帯に起こることが描かれ、技法によって時間の経過が感じられるのは、作品鑑賞の面白いところではないか。現代の漫画にも通じている絵の想像力に感心した。

 その他、発表を準備し、資料やpptなどを作っている。和歌をあまり知らない人にもわかりやすく理解できるため、工夫を凝らしている。これからも自分のプレゼンテーション能力を磨かないと、と痛感した。

 

 また、東京国立博物館の特別展「ヤマト絵-受け継がれる王朝の美-」を見に行った。日本絵巻史上に名高い「源氏物語絵巻」「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵巻」「鳥獣戯画」という「四大絵巻」が30年ぶりに集結し、一気に見ることができ、非常に有意義な時間を過ごした。今月絵巻に扱う体験を多く味わい、絵巻の世界の面白さを感じた。

 また、国立能楽堂で能楽を鑑賞した。現場で初めて能楽を体験することができた。中世室町時代の幽玄たる世界を憧れ、ずっと前から能を見てみたいと思っていた。今回鑑賞したのは狂言「太刀奪」と能「紅葉狩」である。能の舞台は精緻なつくりだと感じた。この世とあの世を繋ぐ橋掛かりは坂であり、本舞台の背景に描かれている松の木、それに、開放的な角度と高さと合わせて、役者の動きと面がくっきり見える。

 狂言の「太刀奪」は、北野神社へ参詣に主人と一緒に出かけた太郎冠者は、よい太刀を持った男を見つけ、その男の太刀を奪おうとしたが、逆に脅され、主人から預かった刀を奪われてしまい、その後、主人と太郎冠者は刀を取り戻すために男を待ち伏せしていると、太郎冠者に縄をもって男を焦らずゆっくりと縛り、最後には失敗した話である。パフォーマンスの滑稽にお腹が捩れるほど笑った。太郎冠者は、店を見ている男の太刀に手をかけたが、逆に脅され、主人から預かった高価な刀を奪われてしまったところ、主人が太郎冠者に縄をもって男を縛れと命じると、太郎冠者は後ろから主人に縄をかけたところが、意外な展開であり、面白かった。

 能の「紅葉狩」は、平維茂の鬼退治を描くものである。他の作品と比べ、鬼と戦う場面があるため、比較的に激闘であり、楽しい演目である。まず、役者たちがゆっくり歩く様子が、体の力強さを感じた。特に美しい女性のふりをする鬼たちの歩きが、女性の繊細さと優雅の中、妙な薄気味悪さが表現されていた。鬼が四人揃って登場し、華やかさと恐ろしさが倍増した。それから、囃子に合わせた舞は、初めはゆったりと優雅な趣であり、観客の私も維茂と同じように心身を緩めたが、急にテンポが早くなり、一気に緊張が高まった。最後の場面に、鬼が紅葉の山道具の中で変装し、鬼の姿に戻って現れ、維茂との激しい戦いの場面で、役者たちの息が合っていたところが特に印象深い。物語でも映画でも、今まで鬼退治の話を多く見てきたが、「紅葉狩」は能の妖艶な特徴が含まれ、格別であると感心した。また、国立能楽堂の字幕付き椅子など、設備が充実し、また、配られた台本などを読んで、わかりやすく最後まで作品の世界に入り味わえた。長い歴史を持つ能楽に対し、その伝統を守り継ぎ、保護してきたことなど、色々と文化伝承の経験を皆は習うべきだ。またこれから他の能楽作品も鑑賞したい。

 様々な文化を体験し、教養を身につけたカラフルな十月だった。迫っている発表と論文に力を入れたい。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2023年10月)

 

名古屋大学大学院経済学研究科社会経済システム専攻

博士前期課程1年・侯 心琦 (ホウ シンチ)

 

1.研究について

 

 いよいよ後期が始まり、10月は学業で充実した月でした。今学期は経営分析、生産管理、国際会計、上級計量経済およびプレゼンテーションスキルという授業を受けており、内容として一番面白いと思うのは生産管理です。将来の需要・売上を過去の時系列データに基づいてどう予測するほか、生産ラインが正常に作動する確率の計算など、今まで勉強したことのない内容なので、小テストと宿題は多いが、興味深い内容でした。そして、経営分析の授業では会計操作に関する本をチームで輪読し発表するという形になっており、日本人学生とチームワークをできる数少ない機会です。また、プレゼンテーションスキルは、名前の通り英語の学術発表を教える授業で、何より先生がものすごく面白い方です。今まで名古屋大学で出会った一番ユーモアのある先生じゃないかと思います。さすがプレゼンを教える先生です。授業で英語の練習を兼ねて、聴衆に合わせてプレゼンの内容を調整する仕方も教えてくれて大変役に立ちます。今後の授業も楽しみです。

 

2.生活について

 

 就職活動に関して、今月はインターンシップを経由した二つの一次面接を受けました。その中の一つは、志望度が高いだけに、自分の準備不足で上手に質問に答えられなかったことに引きずってしまっています。今週中結果届く予想ですが、いい結果がありますように祈ります。

 働いている英語教室がハロウィンの週にみんなで仮装するということで、今回はメイド服を着て出勤しました。スタッフも子供達も、みんなの仮装は面白かったです。特に、小さい女の子たちはプリンセスの格好をする子が多かったので、お母さんたちは頑張ったなと思いつつ、自分はメイドの格好をしてプリンセスたちの世話をしていることを考えると、笑える場面だなと思いました。子供たちは自然に懐いてくれる存在で、自分の子供ではないが、彼らに注ぐ愛情は半端ないくらいだと自信があります。いつも笑顔溢れる職場を見つけてよかったと感謝しています。

 指導教員の清水先生に誘っていただき、台湾の政治大学から特別研究員として名古屋大学にいらっしゃった先生と一緒にランチに行きました。私の役割は主に通訳でした。教授たちと食事をするのは初めてだったので、なかなか新鮮な体験でした。台湾と日本の不動産を研究されている先生で、奥さんと共に名古屋に三ヶ月滞在する予定です。なぜ名古屋を選んだのが不思議です。連絡先を交換したから、今後またお話をお伺いできそうです。