【報告】にほんご人フォーラム 2023 in フィリピン

(独)国際交流基金マニラ日本文化センターとの共催で、2020 年以来、3 年ぶりとなる対面での「にほんご人フォーラム 2023 in フィリピン」を、2023 年 2月6 日(月)~ 8 日(水)に開催しました。

 


報告:国際交流基金マニラ日本文化センター

日本語専門家 大日方 春菜

 

 国際交流基金マニラ日本文化センター(以下:JFM)は、 2009年からフィリピンの公立中等教育機関で行われている第二外国語としての日本語教育支援を行っています。「にほんご人フォーラム in フィリピン(以下:JSFP)」は、2013年からかめのり財団と共催で実施している日本語学習奨励イベントです。「日本語を使い何かを達成する」ことを目指す「にほんご人」の交流イベントであり、フィリピンの中高生にほんご人が一堂に会し、協働して課題に取り組みます。フィリピン社会がアフターコロナへと舵を切ったこともあり、2023年2月に約3年ぶりに対面でのJSFPが帰ってきました。生徒15名と引率教師11名、JFMと一緒にJSFPを企画運営するコア教師11名がエコツーリズムで有名なボホール島に集まり、JSFP2023 in ボホールが実施されました。

 

 

 今回のテーマは「To a New World or New Normal: Let’s Think About Ecology, Tourism, and Regional Promotion! Tana! Discover, Promote, Sustain! フィリピンのこころをまもろう!」です。新型コロナウイルスによる規制が緩和され、人の移動が再開するなかで、持続可能な観光業について考えるちょうどいいタイミングです。また、中高生たちが自分たちの国や地域を振り返り、対外にアピールしていく方法を考えることは、フィリピン人として、そしてにほんご人としての自分自身を確立していくことにも繋がると考えました。タイトルはコア教師により決められました。「Tana!」はボホール島で使われているヴィサヤ語で「ようこそ」という意味です。「フィリピンのこころ」には、フィリピンの自然や文化や伝統、そこに生きる人々の思いなど多くの意味が込められています。

 生徒たちが取り組む課題は「割り当てられた地域でエコツアーを考え、それをにほんご人にアピールする」です。アウトプットとして、日本語で広告やチラシを作成し、最終日に自分たちのアイデアを発表します。1日目は基調講演で「エコツーリズムとは何か」、「どのように企画を作るのか」「どのようにPRするのか」などを学び、2日目はグループに分かれ、ターシャと呼ばれる希少野生動物の保護団体や、エコフレンドリーなリゾート、地域観光局などを回り実践現場を見学し、担当者にインタビューを行いました。

 

 

 

 そして、生徒たちはインターネットを使ったり、会場にいるJFM日本人スタッフにインタビューをしたりしながら、風力発電や自然保護地区の見学、ローカルフードの体験などを含むエコツアーを考えました。さらに、それらをにほんご人へのアピール方法として、「”る”りょこう さぐる・かんじる・リラックスする・たべる」「ロンブロン フィリピンのパラダイスのひみつ」などのキャッチフレーズを付けたチラシを作るなど、限られた時間で考え込まれた素晴らしいアウトプットを発表しました。今回のJSFPを通して、生徒たちはエコツーリズムについて学び、見学するだけでなく、実際にインタビューを行い、大勢の前で発表するなど多くの経験をすることができました。そして、何よりアウトプットを作り出す過程での協働作業は、達成感のあるものであったと思います。JSFP自体は2泊3日の短いものでしたが、生徒本人や、それを見守る教師、そして企画運営をした私たちにとっても、多くの学びや気付きがあり未来に広がるフォーラムを実施することができました。

 

 

「かめのりコミュニティ No.42 2023年3月」より再録