【報告】にほんご人フォーラム2025(タイ)
2025.11.12
にほんご人フォーラム2025(タイ)
独立行政法人国際交流基金(JF)との共催で、前年度に引き続き、集合フォーラム「にほんご人フォーラム2025(JSF2025)」を開催しました。
本年度は、日本の高校生4名と日本語を学ぶ東南アジア5ヵ国の高校生20名、東南アジアで日本語を教える教師10名がタイに集いました。海外での開催は2019年度以来、6年ぶりです。日本語でのワークやフィールドトリップ、各国文化紹介などの様々な活動を通じ、それぞれが新たな気づきを得る貴重な機会となりました。
各プログラムを担当した講師による報告レポートをお届けします。
教師プログラム
報告:国際交流基金バンコク日本文化センター
森田衛日本語上級専門家
ナリサラー・トンミー専任講師
アーパーポーン・ナオサラン専任講師
教師プログラムには、東南アジアの中学や高校で日本語を教えている教師10名が参加しました。タイに来る前にオンラインセッションを2回おこない、準備を整えて集合フォーラムに臨みました。教師プログラムは、フォーラムの活動を通じて自分の授業を振り返り、国に帰って実践できる具体的な活動案を考えることを最大の目標にしました。一連の取り組みを段階的にわかりやすく示すため、以下の教師プログラムの流れ図を作成して活動内容を参加教師に周知しました。

集合フォーラムでは、事前に調べてきた自国の教育政策を自分の授業案に活かすため、生徒プログラムの体験や観察、そして他の参加教師との話し合いや振り返りを通じて、考えを深めていきました。


「にほんご人フォーラム」立ち上げ期にあたる2012年から2014年にかけて参加した二人の先輩教師に体験談を聞くセッションもおこなわれました。先輩教師からはフォーラムに参加して自身の教授観が「教える」から「支援する」に変化したことや、教師が常に学び続ける姿勢は生徒に伝わるといった示唆に富むお話があり、参加教師は熱心に耳を傾け学びを深めました。

最終日には参加教師全員が授業案を発表しました。その後行われた全体の振り返りでは笑いや涙を交えて感想を述べた後、今後のアクションプラン(行動計画)を一人ひとりが付箋に書いて流れ図の上に貼っていきました。集合フォーラムはこれで終わりますが、流れ図で示した参加教師たちの取り組みはさらに大きくなって続いていきます。

生徒プログラム
報告:国際交流基金バンコク日本文化センター
近藤麻衣子日本語専門家
ラサー・セウィクン専任講師
深田芽生専任講師
生徒プログラムは、「小さなこころがけ、大きな変化~ゴミ問題について私たちにできることは?~」をテーマに5日間のメインセッションを行いました。生徒は参加6か国から1名ずつ編成された多国籍グループに分かれて、到着日である1日目からグループ活動を開始しました。初日は多くの参加生徒が緊張していた様子でしたが、各グループに元気で明るいタイ人中等教師がファシリテーターとして入ったこともあり、少しずつ緊張がほぐれていったようです。

2日目からはテーマへの関心を高め、翌日3日目にはフィールドトリップとして漂流ゴミが流れつく場所で実際にゴミ拾いやゴミの種類を分析したり、タイの水上マーケットを訪れタイの日常に触れたりしました。2日目と3日目で「ゴミ問題」という地球規模の課題が、実は私たち一人ひとりの日常生活や意識と密接に関係していることを感じてもらえたのではないかと思います。

4日目からは「ゴミ問題」を解決するための取り組みに目を向け、高校生である自分達でも取り組める課題解決を考えるステップを踏みました。そして、最終日にはフォーラムで大切に思ったことを「発信する」グループ発表と、「私には何ができるか」を考えた個人のAction Planの発表を行いました。最終発表やその準備過程では、グループメンバーの意見を取り入れながら発表内容を協働して作り上げていく様子や、メンバーの得意を活かした小道具や演出が採り入れられており、それぞれのグループの特長が現れていたのが印象的でした。

フォーラムを通じて、多国籍グループでの活動に参加した生徒たちは、言語や文化の違いに戸惑いながらも、ジェスチャーなどを活用して積極的にコミュニケーションを取っていました。短い日程ではありましたが、フォーラムでの経験を将来の糧としていってもらえることを期待しています。
またJSF2025タイの特長は何と言っても、テーマを決める企画段階からタイ中等教師4名が運営に参画したことです。当日はさらにファシリテーターの4名も加えた8名とともに生徒プログラムを運営することができ、タイらしいフォーラムになり、私たちにとっても大変大きな学びの機会となりました。
プログラム概要
1.主催:独立行政法人国際交流基金、公益財団法人かめのり財団
2.実施期間:
オンラインセッション:生徒プログラム 2025年9月13日(土)
教師プログラム 2025年9月13日(土)、10月4日(土) 各2時間
メインプログラム:2025年10月10日(金)から10月17日(金)
3.会場: Divalux Resort and Spa Bangkok(タイ)
4.参加者:東南アジア5ヵ国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)から生徒各4名、中等教育日本語教師各2名、引率者各1名、日本の高校生4名 合計39名
5.プログラムの目的:
①東南アジアと日本の若い世代が、相互理解における言葉の大切さ、ことばを学ぶことで得られる将来の可能性の広がり、 国や文化が異なる人と協力することの楽しさや難しさを知る。
②自身のアイデンティティを認識するとともに、多様な人、文化、社会とつながりを形成しながら自ら行動できる力を伸ばす。