【報告】にほんご人フォーラム2025(マレーシア)~中等教育日本語教師キャンプ~

2025.09.19

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センターとの共催で、「にほんご人フォーラム2025(マレーシア)~中等教育日本語教師キャンプ~」を実施しました。南部、中央部、北部に分かれての集合研修により、「21世紀型スキル」の理解を深め、実践に取り組みました。

 現地の日本語専門家による実施報告レポートをお届けします。

 


報告:国際交流基金クアラルンプール日本文化センター

日本語上級専門家 三矢 真由美

 

 国際交流基金クアラルンプール日本文化センターでは、かめのり財団とマレーシア教育省の協力を得て、2泊3日の中等教育集合研修を南部、北部、中央部の3か所で実施し、76名の教師が参加しました(南部18名、北部25名、中央部33名)。

 

 

 マレーシアの中等教育のカリキュラムでは21世紀型スキルの育成が謳われていますが、実践している先生はまだ多くありません。そこでこの研修では、21世紀型スキルはちょっと工夫すれば日本語の授業にも取り入れられるということを知ってもらうことを目標としました。今回は特に「考える」に焦点を当て、生徒が積極的に考える過程を取り入れた活動を体験しました。思考はすべての学習の源であり、生徒が自ら考えることができる授業は自律学習や学習者中心の教育など様々な学習アプローチにつながるからです。

 

 

 異文化理解のセッションでは思考の可視化の方法「See, Think, Wonder」を体験しました。様々な写真を見て、見えること、考えたこと、疑問に思ったことを次々出していきます。このように思考を可視化することは文化の表層部だけでなく、その裏にある人の価値観やものの見方への気づきにもつながります。

 

 

 漢字のセッションでは生徒が自分で学習方法を考える活動を取り入れました。教師は漢字は偏と旁に分けるものだと思いがちですが、生徒にとっては図形と同じ。偏と旁にこだわらず、自由に分解し、ストーリーを考えて楽しく覚えていきます。

 

 

 風呂敷ワークショップでは風呂敷がかつて廃れた背景としてビニール袋や紙袋の登場があること、さらにそれが環境問題につながっていることにも触れました。

 

 

 さて、3日間のこの研修、参加者にどのような変化をもたらしたのでしょうか。アンケートには次のような感想がつづられていました。

「参加する前は文法中心で教えることが大切だと思っていましたが、今は活動や体験を通して楽しく学ぶことの重要性に気づきました。」

「21世紀の教師として生徒に教えることはチャレンジです。研修に参加して、生徒の学び方がもっと理解できるようになりました。」

 共通するのは、これまで教師の目線で見ていたのが生徒の目線で見られるようになったという点です。「教え方」から「学び方」へ。この変化は教師が授業を変えていく上での大きな一歩になるのではないでしょうか。

 最後に、集合研修をご支援いただいたかめのり財団に心より感謝申し上げます。

 

 

プログラム概要

対象者:マレーシア中等学校教師

目的:日本語教授スキルおよび日本語能力の向上と維持

 

日程

場所

参加者

2025年8月5日(火)~7日(木)

北部:ペナン

25名

2025年8月19日(火)~21日(木)

南部:ジョホールバル

18名

2025年9月9日(火)~11日(木)

中央部:クアラルンプール

33名