【報告】にほんご人フォーラム2023 in インドネシア 「防災」をテーマに西ジャワで実施

 (独)国際交流基金ジャカルタ日本文化センターとの共催で、2023年11月10日(金)~12日(日)に「にほんご人フォーラム2023 in インドネシア」を西ジャワ州バンドンにて実施しました。

 このフォーラムの目的は、インドネシアにおける日本語教育を盛り上げる中核教師の育成、プロジェクト型学習等の学びの体験、日本語学習のモチベーション向上、そして、21世紀型スキルの育成や教師間のネットワーク形成を目指すにほんご人フォーラムの考え方や方法の普及です。今回は、西ジャワ地域から選ばれた生徒24名と教師12名、そして全国よりファシリテーター教師6名が参加しました。

 


 

報告:(独)国際交流基金ジャカルタ日本文化センター

日本語専門家 牟田綾

 

 国際交流基金ジャカルタ日本文化センターは2014年よりかめのり財団とともに「にほんご人フォーラム」関連事業を行ってきました。2023年度は西ジャワで「防災」をテーマとしたミニフォーラムを実施し、生徒24名、教師12名が参加しました。当地域は災害が多い地域であるものの、防災教育はほとんど行われていないのが現状です。

 

 今回のフォーラムは「防災」について自分たちで定義する過程も重視しました。実はファシリテーターとの準備会議で「防災」に関するスキーマの異なりに気づいたからです。例えばある教師はごみ山からの火災は身近で重大な災害であり、プラスチックごみの減量が「防災」であると訴え、それに対し「それはエコ活動であり防災ではないのでは」という意見もでました。日本では「災害時のリスクを軽減するための備え」といった定義が一般化していますが、自分たちのための「防災」を参加者自身が考え定義することが必要と考え、情報源は指定せずに防災に関する日本の動画とインドネシアの動画を探しレポートすることを事前課題としました。参加者は初日にそれらをグループで共有し、対話によって整理したうえで自分たちなりの防災の定義を発表しました。そのような過程をとおし防災のステレオタイプに気づき、視野を広げることができました。

 

 

 その後、防災グッズ作りや街頭インタビュー活動をへて、周りの人たちのために自分たちができることをグループで考え、最後はそれをスキットとして伝えることをゴールとしました。発表会では全国日本語高校教師会会長をはじめ、教育局や防災庁からのゲストもあり「生徒の21世紀型能力を養成するプログラム」「新カリキュラムにふさわしい」という評価を受けました。

 

 

 プロジェクト学習では正解のない問いについて、対話をとおして自分たちなりの答えを出していくこと、いわば一般的なテーマを自分たちのテーマに引き寄せるというプロセスが重要だと考えています。最後のふり返りで「3日間が3年に感じた」と涙とともに語ってくれた生徒のことばどおり、参加者たちがときには悩みながらこのプロセスを着実に進んでいく様子が感じられました。

 

 またファシリテーター教師は多忙な本業の合間をぬって3カ月にわたり準備を行ってきました。参加者のためそして自分のチャレンジのためというモチベーションをもって真摯に取り組むファシリテーター教師がいてこそ、インドネシアのにほんご人フォーラムが成立しています。

 

 インドネシアの中等教育機関では23年度より新しい教育カリキュラムの本格的な導入期となり、プロジェクト学習が積極的に取り入れられています。このような転換期においてにほんご人フォーラムを体験した教師らがそれぞれの現場で実践につなげていけるよう、今後も支援していきます。

 

 

 

 実施期間 

 

 2023年11月10日(金)~12日(日)

 

 場所

 

 西ジャワ州バンドン市

 

 参加者

 

 参加生徒24名、参加教師12名、ファシリテーター教師6名