【報告】インドネシア派遣プログラム「高校生を対象とした富山市の国際協力現場体験学習」
2025.10.07
2025年8月16日から23日にかけて、富山市、国際協力機構(JICA)とかめのり財団との共催により、富山市の高校生6名がインドネシアに派遣されました。
本プログラム「高校生を対象とした富山市の国際協力現場体験学習」は、今年度初の試みとして実施されたもので、参加した高校生は、企業や学校の訪問、国際協力プロジェクトの視察を通じて、現地の取り組みや国際協力の実際を学びました。
報告:JICA北陸 金岡紀子
研修テーマは「環境」
今回の渡航の主な目的は「環境」について学ぶことでした。その背景には、富山市が内閣府の「SDGs未来都市」に選定されていることや、過去にG7環境大臣会合が行われるなど環境先進都市であることがあげられます。研修に参加した6人の生徒が通う富山国際大学付属高校もまたSDGsに関する取り組みが盛んなことで知られています。現地では5日間の行程で、富山市やJICAによる国際協力事業の視察や文化交流を体験しました。ここでは、今回のプログラムの中でもハイライトとなった、現地高校生との交流の様子をご紹介します。
バリ島で深刻化するゴミ処理問題
最初に訪ねた在デンパサール日本総領事館では、宮川総領事にバリ島のゴミ問題が喫緊の課題であることを伺いました。日本では比較的浸透しているゴミの分別ですが、バリ島ではその習慣が定着していないといいます。バリ島の観光地では景観保護の観点から建物の高さを15メートル以内とする決まりがありますが、最終処分場には手つかずのゴミの山があり、それが15メートルを上回る高さであることなどを知りました。放置されたままのゴミの山は環境や衛生面において問題があることから、この先順次、最終処分場の閉鎖が決まっているといいます。
コンポストで資源の循環を目指そう
こうした状況を受け、バリ島の教育機関では、家庭から出る有機ゴミ(生ゴミ)を削減しようと、コンポストの普及が進められています。現地の高校(SMA Negeri 3 Denpasar)を訪問し、実際にその様子を見せてもらいました。
訪れた高校では、枝葉や給食の生ゴミを利用して堆肥化する取り組みを行っています。この日は、学校の庭木の枝葉を粉砕し、コンポストの容器に入れる作業を富山の生徒たちが体験させてもらいました。また、プラスチックごみの削減のため、各自マイボトルを持参し必要な時に給水していました。学校内の売店では、ペットボトルの水の販売を中止するなど、徹底ぶりが伺えました。
学び合いのディスカッション
場面は変わり、ディスカッションの時間には、富山の高校生たちが、日本のゴミの分別回収について紹介しました。インドネシアの生徒たちは、決められた日にゴミを分別して出す日本の習慣に感心した様子で、「違った日にゴミを出した場合、ペナルティ(罰則)があるのか」という質問が出ました。富山県内では、主に町内会ごとに分別ゴミの管理が行われていて、曜日構わずゴミを出す事例は少ないです。富山の高校生たちにとっては当たり前のことで、罰則について意識したことがなかったようでした。分別回収が習慣化されているからですね。ゴミ処理ひとつとっても文化的背景により受け止め方が違うことを知る機会となりました。
また、ゴミ処理に対する“技術の発展”と人々の“意識改革”のどちらが重要かという、バリの高校生からの問いもありました。富山の高校生は、どちらも大事だけれど、技術の発展は人々の意識改革から生まれるのではないかといった意見が出ていました。きっと正解はひとつではありません。富山とバリ島のゴミ処理を取り巻く状況は異なりますが、一緒に考えたり意見を交わしたりすることはできます。同年代の生徒との交流を通じて、ともに学び、新しい視点を得る機会になったのではないかと思います。
プログラム概要
実施団体:富山市、(独)国際協力機構、(公財)かめのり財団
実施期間:2025年8月16日~23日(8日間)
参加人数:高校生6名
訪問場所:インドネシア バリ島(デンパサール、タバナン)