【報告】タイ・バンコクでの中等日本語教育セミナー・シンポジウムを実施しました/JFBKK他との共催

 公益財団法人かめのり財団は、国際交流基金バンコク日本文化センター(JFBKK)との共催で、2024年3月8日(金)に中等日本語教育セミナー「21世紀を生き抜く力-これからの中等教育で育成すべき資質・能力について」を、また3月9日(土)には、タイ国日本語日本文化教師協会(JTAT)、カセサート大学、国際交流基金バンコク日本文化センター(JFBKK)との共催により、第1回タイ国日本語教育国際シンポジウム―「これからの社会に生きる力」―を、タイ・バンコクにて実施し、それぞれの基調講演を當作靖彦先生が行いました。現地の日本語専門家による実施報告レポートをお届けします。

 


 

報告:国際交流基金バンコク日本文化センター

日本語上級専門家 森田 衛

 

 「第1回タイ国日本語教育国際シンポジウム―これからの社会に生きる力―」はコロナ禍で延期を余儀なくされていましたが、関係者の努力の結果、2024年3月にバンコクのカセサート大学で対面開催が実現しました。シンポジウムにはタイをはじめ、日本、ベトナム、カンボジア、マレーシアから日本語教育関係者200名余りが参加しました。當作靖彦教授(カリフォルニア大学サンディエゴ校)による基調講演「ジェネラティブAI時代の言語教育―その可能性・活用及び課題―」では、近年急速に発展を遂げるジェネラティブAIを取り上げ、教育面での活用方法や活用にあたって留意すべき点について詳細に解説していただきました。近い将来、人工知能が人間の知能を超える時代が到来することを前提に、人間がAIにどう向き合っていかなければならないか示唆に富むお話がたくさん含まれており、聴衆はメモを取りながら當作教授のお話に熱心に耳を傾けていました。たしかにAIは便利であり今後も普及が見込まれる反面、教師が使う際には使い方に十分留意する必要があると思います。當作教授がレッスンプランを作るときにはジェネラティブAIを絶対に使わないと決めていると述べられたように、便利だからといって安易に流されるのではなく、教育の分野においては人間が持つ優れた創造力や共感力を鈍化させないような行動や配慮が、今後ますます重要になってくるのではないかと感じられました。

 

 

 午後は分科会が行われ、33件の発表がありました。それぞれの国の日本語授業の実践報告、研究発表、教材開発、教材分析、学習者の動機や進路に関する調査など多岐に渡りました。分科会の後、當作教授から全体のまとめと質疑応答がありました。

 

 

 その前日には、タイの中学や高校で日本語を教えている教師を対象とした「中等日本語教育セミナー」がバンコク市内のホテルで開催され、タイ全土から約60名が参加しました。當作教授による基調講演「21世紀を生き抜く力ーこれからの中等教育で育成すべき資質・能力についてー」では、タイの中等教育のカリキュラムが生徒のコンピテンシー育成を重視している点を踏まえ、言語教育の目的が「ツールとしての言語の教育」から「言語を通しての人間教育」へと変化している状況を豊富な具体例を挙げながらお話されました。言語教育の教育的目的を「広い視野を身につけたり、異文化を持った人たちとうまく付き合い、一緒に世界の問題を解決し、よい社会を作っていくための人間力、社会力を発展させる」と定義し、将来の予測が難しい21世紀を生き抜くためには、①学習スキル、②リテラシースキル、③ライフスキルを伸ばすことが大切であり、言語そのものを教えていないけれども、結果的に言語力が高まり人間力も高まっていくような教育が社会に求められていることを強調されました。予測不能な社会の到来というとやや不安な気持ちになりますが、當作教授が指摘された点を意識した教育を教師が志していけば、社会の変化にも恐れずに柔軟に対応することができると思います。知識の源は経験であり、失敗を恐れずに積極的に学習経験を積める場を作ることができれば、明るい未来が待っているという希望を参加者に抱かせる講演でした。事後アンケートによると、セミナーに参加した中学・高校の先生方の9割以上が新しい教育観を取り入れた授業に関心を示しており、今後の教育現場での実践に期待しています。

 

 

 午後はタイの中等日本語教師によるパネルディスカッションが行われ、當作教授には先生方の発表や参加者からのさまざまな質問に真摯にご対応いただきました。午前の講演で触れた内容を振り返りつつ、発表者や質問者に対して励ましのコメントを多くいただきました。

 

 

 最後になりますが、今回の講演のためにアメリカ・サンディエゴからはるばる26時間かけてバンコクまで来てくださった當作教授と、ご支援をいただきましたかめのり財団に心より感謝申し上げます。

 


 

実施概要

 

中等日本語教育セミナー「21世紀を生き抜く力-これからの中等教育で育成すべき資質・能力について」

日程:2024年3月8日(金)

主催: 国際交流基金バンコク日本文化センター(JFBKK)、かめのり財団

参加対象・人数:タイ中等教育機関の日本語教師 約60名

会場:レンブラントホテル、バンコク

HP:https://ba.jpf.go.jp/ja/seminar20240308-2/

 

 

第1回タイ国日本語教育国際シンポジウム―「これからの社会に生きる力」―

日程:2024年3月9日(土)

主催: タイ国日本語日本文化教師協会(JTAT)、カセサート大学、かめのり財団、国際交流基金バンコク日本文化センター(JFBKK) 協力団体:泰日経済技術振興協会(TPA)

参加対象・人数: 教師、研究者、学者、大学生、政府機関職員、民間の団体職員、一般人  約200名

会場:カセサート大学人文学部

HP:https://ba.jpf.go.jp/ja/seminar20240309-2/