奨学生 8月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年8月)

 

 

横浜国立大学大学院国際社会科学府国際経済法学専攻

博士後期課程(D1)

朴 亨哲(パク ヒョンチョル)

 

                    

研究について

 

 8月の厳しい暑さの中でも、私は10月16日の学会提出を目標に、毎日午後から夜にかけて論文執筆に取り組み、研究に専念しています。執筆を進める過程で新しい資料に触れるたびに、引用すべき知識や事実、そして自分自身の考えを整理し、洗練させる機会を得ています。時には既存の原稿の論旨を修正・補強する必要が生じることもありますが、そのような過程こそが、単なる資料の羅列ではなく研究をより成熟させる大切な契機になっていると感じています。そのため、新しく得た知見と既存の原稿をどのように調和させ、より完成度の高い論文へと発展させるかを日々模索しています。

 

 また、午前中は英語学習に集中しています。思うように上達が早くなく、外国語学習の難しさを日々痛感していますが、それでも少しずつ会話が続けられるようになったり、英語論文を読む速度が以前より速くなったりすると、小さな達成感と喜びを感じています。研究は座って行う作業ではありますが、運動に似ていると考えています。毎日コツコツと繰り返すことで初めて身につき、いわば「メモリーマッスル」のように蓄積され、その積み重ねを基盤として新しい発想が生まれるのだと実感しています。このように、一日を研究と学習に専念できるのは、ひとえにかめのり財団のご支援のおかげであり、この貴重な環境に対して日々心から感謝しております。

 

生活について

 

 今年の夏は日本各地で33〜35度の暑さが続きましたが、そのような中でも室内で研究に専念できることは大変幸運なことだと感じております。屋外で作業されている方々を見ると、自分の置かれた環境に一層感謝するとともに、この恵まれた環境の中で研究により一層励まなければならないと改めて思いました。幸いにも学内の寮に居住しており、電動自転車で3分ほどの距離にある大学院生自習室に毎日通っており、この点でも非常に良い環境にあることを実感しています。

 

 最近は妻が読書を始め、共に本について話し合う機会が増えました。以前、私自身が深い感銘を受けたドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を贈りましたが、19世紀のロシア社会を描きつつも現代にも通用する普遍的な問題意識を含んでおり、今もなお最高の評価を受ける理由がよく分かる作品だと考えています。無人島に一冊だけ本を持って行くならば迷わずこの作品を選ぶだろうという確信があったため、自信をもって贈ることができました。私自身も研究活動の合間に少しずつ読み返しながら、新たな着想を得たいと考えております。

 

 猛暑の中、毎日大学院の自習室で多くの時間を過ごす単調な生活が続いておりますが、精神的・肉体的な健康に留意し、最良のコンディションを維持しながら研究に没頭し、良い成果を出したいという思いで生活しております。

 

 


 

 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年8月)

 

 

お茶の水女子大学大学院・比較社会文化学専攻

博士三年・曹怡(ソウ イ)

 

 

 今月も発表資料の準備に専念していた。先生や先輩方から多くの意見をいただき、何度も修正を加え、ようやく大会に提出することができた。ひとまず休息を取りつつ、怠けることなく今後の学習に向かう予定である。

 

 例えば、来学期の授業内容を予習している。ゼミでは『夜の寝覚』という中世王朝物語を中心に輪読を行う。原作本と改作本における作中和歌を比較し、改作本がなぜ和歌を詠み替えるのかを分析する内容である。物語の和歌比較は今回が初めての学習であり、内容を楽しみにしている。長編物語であるため、まずは話の展開を予習することが基本である。

 

 また、連歌の授業では兼載『聖廟法楽千句』第二百韻の輪読が行われる。この作品はよく詠まれたものであり、四種類の古注釈が伝わっている。第一百韻に関してはすでに現代語訳付きの書籍が刊行されており、先に目を通したところ、古注釈に対して新たな発見があり、自身の研究に繋がる手がかりを得ることができた。

 

 また、月初めには友人と根津美術館を訪れた。開催中の「唐絵―中国絵画と日本中世の水墨画―」展は自分の研究と密接に関わっており、大いに学ぶことができた。牧谿筆「漁村夕照図」や伝李安忠筆「鶉図」などの名画を一度に鑑賞できたことは貴重であった。図録も所蔵作品を多く収録しており、ためらわず購入した。さらに、展示作品の中で、これまで探していた和歌の用例と合致するものを見出すことができた。予想外の発見であり、すぐに発表内容に取り入れることができた。十五世紀室町時代に流行した水墨画の図様が、どのように周囲の人々に伝わり、歌の世界に影響を与えたかは、今後の課題であると考える。

 

 今月の食事会も楽しいひとときであった。OB・OGの中でも、今年修了した候氏らとも再会し、互いに仕事や生活について語り合い、安心感を覚えた。また、新たに入学した奨学生とも話す機会があり、研究内容についても興味深く聞くことができた。もちろんコース料理も存分に堪能した。これまで研究に没頭し、博士課程の仲間たちと交流する機会が少なかったため、久々の懇談は大きな励みとなった。

 

 研究以外では、アルバイトとして中国語授業の準備を進めている。基礎文法や知識事項をいかにわかりやすく説明するか工夫し、黒板のまとめや練習ゲームを考案し、複数の教科書を参照している。母語を他者に教えることは想像以上に難しく、細部において学生が気づく点や日本語との混乱点を的確に説明することが教師の役割であると感じている。日々の積み重ねにより、自身の専門性を高める必要があると考える。

 

 さらに、月下旬には陳氏らとレンタカーで群馬県の尾瀬国立公園を訪れた。緑豊かな自然の中を散策し、研究で疲れた目を癒した。大自然を満喫することで、心身のリフレッシュができた。

 

 来月は上海に帰省する予定である。九月になったとはいえ、まだまだ酷暑が続いており、夏休みが始まったような気分である。家族や友人と再会できるのを楽しみにしている。ついでに、レストランやイベントの案内などもしている。

 

2025年8月27日