奨学生 4月の月次レポートを掲載しました
2025.05.14
かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。
かめのり大学院留学アジア奨学生
月次報告レポート(2025年4月)
立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科 身体運動科学領域専攻
博士課程前期課程(M2)
I Wayan Yuuki (イ ワヤン ユウキ)
1.研究内容について
4月をもって博士課程前期2回生(M2)となりました。昨年度のレポートを振り返ると、研究に対する理解や表現力の面で、自身の成長を実感しております。修士論文の提出まで残り約8ヶ月となる現在、本レポートでは、これまでの研究活動を振り返るとともに、今後の計画および展望について記述いたします。
現在取り組んでいる修士論文のテーマは、「ココナッツオイルに多く含有される中鎖脂肪酸と有酸素性運動の併用が及ぼす認知機能への影響」です。M1の春から冬季休暇中にかけて実験を実施し、データ収集を完了しました。その後は、論文執筆や学会抄録の作成に取り組み、研究課題の解明に向けて着実に進展しております。以下に、これまで(修士課程)の主な活動成果をまとめます。
1.実験成果の一部をAmerican Journal of Clinical Nutrition(アメリカ臨床栄養学雑誌)に投稿し、現在査読待ちです。研究概要の一端は、第3回OJC研究会(札幌医科大学)にて発表いたしました。タイトルや詳細については現在未公表のため、公表可能になり次第、改めてご報告いたします。
2.以下の題名で、国際学会にて発表予定または既に発表を行いました。
・Sex difference in the combined effects of moderate-intensity aerobic exercise and medium-chain triglycerides on working memory”. 30th Annual Congress of the European College of Sport Science(2025年7月に口頭発表予定)。
概要:中鎖脂肪酸と有酸素性運動の併用は、単独摂取と比較して作業記憶の改善を示さず、性差も認められなかった。
・“Four weeks of medium-chain triglycerides intake with/without moderate-intensity aerobic exercise advances working memory improvement in healthy young men”. 29th Annual Congress of the European College of Sport Science(2024年7月にポスター発表済)。
概要:若年男性における4週間の中鎖脂肪酸摂取は、有酸素性運動との併用の有無に関わらず、作業記憶を向上させた。
正直なところ、ここまで成果を積み上げてくる過程では、大きなミスや判断の誤りを何度も経験し、そのたびに厳しいご指摘をいただいてきました。しかし、そのひとつひとつが、私にとってかけがえのない学びの機会であったと、今では実感しています。
指導教員の先生は、まるで厳しくも温かい先輩のような存在です。「わからないことは強がらず、正直にわからないと言ってほしい」「やってしまったことは仕方ない。それを次に活かせばいい」そんな言葉に、幾度となく救われてきました。時には「研究者失格だ」と言われたこともありましたが、私はその言葉の裏に、期待と愛情、そして成長を見届けようとする深い思いを感じています。先生の包容力、誠実に向き合ってくださる姿勢、そして確かな指導力に、心からの尊敬と感謝の気持ちを抱いています。私もいつか、誰かの成長を支えられるような、そんな研究者になりたいと強く思っています。
上記で述べた成果を統合的に整理し、修了に向けた修士論文の執筆に注力していきたいと考えております。
2.私生活について
かめのり財団の支援を受けてから、早くも一年が経過しました。この一年間は、研究にじっくりと向き合う時間を確保することができ、自身の成長を実感できる貴重な機会となりました。日常生活の中でも、常に研究のことが頭にあり、プライベートの時間でさえ思考を止めることが難しいほど、研究に没頭してきたように思います。
現在は、博士課程への進学と学振DC1への申請を視野に入れ、4月・5月は特に多忙な日々を過ごしています。新たな実験構成の検討や予備実験の実施、指導教員や共同研究者との議論を重ねながら、研究計画の精緻化に取り組んでいます。並行して、日本体力医学会への参加を予定しており、その抄録提出に向けた準備も進めています。また、今後の研究活動を支えるための助成金申請も視野に入れています。
これまでで最も忙しい時期かもしれませんが、課題一つひとつに丁寧に向き合いながら、充実感を持って取り組めています。最近は、少し疲れが出てきたのか、夜は友人と外食をしてお酒を嗜むことも増えてきました。研究から少し離れるそのひとときが、とても心地よく、心身ともにリフレッシュできる大切な時間となっています。
始まりの季節を告げる、大学付近の桜
かめのり大学院留学アジア奨学生
月次報告レポート(2025年4月)
お茶の水女子大学大学院・比較社会文化学専攻
博士三年・曹怡(ソウ イ)
学期の初めには、新年度の研究指導計画書を作成し、今後の学習計画について先生と相談した。現在は秋の校外の大会発表に向けて準備を進めており、それを基に学会誌への投稿を目指している。今回の研究の中心テーマは、歌人正徹の歌における、先行研究でも指摘されている彼の奇抜な発想についてである。特に、五山文学や中国文学との関係性に着目して考察を深めたいと考えている。今月は、関連する用例を収集・分析している段階であり、これまでの論文で蓄積してきた感性や知見を踏まえて、どのように関連性を整理し、結論を導き出すか工夫が求められている。
それから、今学期は連歌の授業を聴講している。これまで論文でたびたび引用してきた連歌の用例に関して、理解や解釈がまだ足りないと痛感し、基礎知識の再確認から調査方法の習得まで、学び直したいと考えている。そのため、授業内の輪読発表などにも力を入れて取り組むつもりである。さらに、今学期のゼミでは中世王朝物語の一つである『豊明絵草子』の輪読が行われている。精緻な白描の絵巻を鑑賞しつつ、その内容が現世の無常を主題としている点に注目し、今後の内容の深掘りを楽しみにしている。このようにして今学期の計画を立て、輪読する作品の予習を進めているうちに、あっという間に一ヶ月が過ぎた。
また、去年、校内の雑誌に投稿した論文の件が一段落し、先日その抜刷を受け取った。論文は「自分の子供のようなもの」とよく言われるが、今回初めてその言葉の意味を実感した。何冊か実家に持って帰って友人たちにも見せたところ、「内容が難しくて読めない」と言われたが、それでも、自分が今何を取り組んでいるのかを具体的に示すことができた。19日には学校のオープンキャンパスに参加した。来場した学内外の学部生に対し、博士前期課程の実態について様々な質問に答えた。自身を振り返ると、修士課程の二年間は非常に短く感じられる。一年目は単位取得のため多くの授業を履修し、発表やレポートに追われる日々であった。二年目には大量の先行研究を読み、修士論文の執筆に真剣に取り組んだ。振り返ってみれば、大きな成長を遂げた二年間であったと実感している。
先日、中国の映画『ナタ2魔童の大暴れ』を観に行った。国産アニメとして過去最高峰と言っても過言ではないほど高く評価されている作品である。日本でも上映されていたため、池袋の映画館で鑑賞した。戦いシーンは非常に迫力があり、存分に楽しむことができたが、脚本には少し物足りなさを感じた。感動を誘う場面では、心を深く打たれるほどの共鳴までは得られなかった。しかし、物語自体は興味深く、続編への期待が高まる作品であった。また、先輩とともに東京都庭園美術館を見学した。昭和八年に竣工した朝香宮邸は、モダニズムの外観を備え、格調高い独特のアール・デコ建築として魅力的である。館内のデザインや壁面の装飾も、和洋折衷の美しさが見事に表現されており、深い感銘を受けた。
今週は上海に帰省した。クレジットカードの更新など各種手続きを済ませ、美味しい食事を楽しみながら、しばしの間心身をリラックスさせることができた。明日からは中国の貴州と重慶を旅行する予定である。かねてより楽しみにしていた未知の地域を探訪し、新たな発見に胸が高鳴っている。来月には日本に戻り、研究に専念し、成果を早期にまとめたいと考えている。