2026年度採用 2名の大学院留学アジア奨学生をご紹介します

 2026年4月、かめのり財団では新たに2名の大学院留学アジア奨学生を迎えました。未来を見据え、志高く研究に取り組み留学生活を送る新奨学生より、自己紹介のメッセージが届きましたのでご紹介します。

 


 

  

 

陳 重華  チン ジュウカ(中国)

立命館大学大学院 生命科学研究科 生命医科学専攻 博士前期課程(M1)

 

 

 みなさん、初めまして。立命館大学大学院生命科学研究科生命医科学専攻の陳 重華(チン ジュウカ)と申します。この度は、かめのり財団の奨学生として選出いただき、心より感謝申し上げます。

 

 私は中国出身の留学生で、現在はHR 陽性HER2陰性進行性乳がんに対する内分泌治療の費用対効果分析をテーマとして研究を進めております。少子高齢化の進展や医療技術の高度化に伴い、医療費は年々増加しており、限られた医療資源をいかに効率的かつ公平に分配するかが重要な課題となっております。私は、医療資源配分に関わる意思決定に経済性に関する定量的根拠を提示することで、医療制度の持続可能性の向上に貢献し、社会へ還元することを志しております。

 

 乳がんを研究対象として選んだ背景には、個人的な経験があります。高校時代、母が乳腺腫瘍の疑いで入院したことがあり、その際に患者本人や家族が抱える身体的・精神的・経済的な負担の大きさを実感いたしました。幸いにも良性腫瘍であったものの、この経験を通じて、患者の負担軽減と医療の在り方について深く考えるようになりました。乳がんは、女性に発生するがんの中で最も頻度が高く、その罹患数・死亡数・医療費はいずれも増加する傾向にあります。中でもHR陽性HER2陰性乳がんは全体の7割を占め、治療後に多くの患者がいずれ薬剤耐性を獲得し、再発・進行に至ります。近年では、CDK4/6阻害薬のような月額50万円を超える高額な新規治療薬が登場しており、その臨床的有効性とともに経済的妥当性についての評価が強く求められております。私はこれらの新規治療を従来の療法と比較し、費用対効果の観点から分析を行うことで、患者にとっても社会にとっても望ましい治療選択のあり方を明らかにしたいと考えております。

 

 また、私は中国で生まれ育ち、日本で5年間学ぶ中で、両国の文化や価値観の違いに触れてきました。近年、日中関係にはさまざまな課題が見られますが、だからこそ若い世代の対話と相互理解が一層重要であると感じております。

 

 今後は、医療経済評価の専門性を一層深化させるとともに、医薬品のもたらす多様な社会的価値への理解を広げ、社会的意義を含めた医薬品価値の再評価といった、より発展的かつ先導的な研究にも取り組んでいきたいと考えております。これらを通じて、エビデンスに基づく医療政策の形成に貢献できる人材となることを目指しております。さらに、日本で得た知見を活かし、国際的な学術交流や地域社会への貢献にも積極的に関わりながら、国際間の相互理解の促進に寄与していきたいと考えております。

 

 

 


 

 

黄 振峰   コウ シンホウ(中国)

北海道大学大学院 経済学院現代経済経営専攻 修士・博士前期

 

 

 十六歳の春 、独りで故郷を離れ、言葉も慣れない日本で学ぶという道を選びました。誰もが通る広い道の端に、ぽつんと現れた細い小径。そこに心を惹かれたのは、たぶん、まだ見ぬ景色を見てみたかったからでしょう。

 

 気づけば、日本でも8度目の春を迎えました。その道は、決して歩きやすくありませんでした。異国の地で、京都から岡山の高校へと転校も経験しました。何よりも、日本人生徒と同じように一般入試で大学に挑まねばならなかった私にとって、特に国語で何度も挫けそうになりました。それでも幸いなことに、北海道大学で満開の桜を見上げることができました。歩みを重ねる中で、踏み入れた小径の先には、思いも寄らない景色が待っていました。周囲の温かい支えのおかげで、学部卒業にあたって、北海道大学経済学部の首席卒業を果たし、北海道大学で最も名誉ある『クラーク賞』を受賞することができました。卒業論文も特選論文に選ばれ、身に余る光栄に感謝の念に堪えません。

 

 大学では、経済学を中心に、行動科学と数学に触れながら、研究に取り組んできました。経済学というと、お金儲けの汚れた話だと思われるかもしれません。しかし、経済とは、「経世済民(世を経め、民を済う)」を略した言葉です。すなわち、経済学とは、人々を幸せにする為の学問です。数字の背後には誰かの暮らしがあり、将来への希望や不安、生活の重みが宿っています。大学院では、培ってきた経済学の知識を深め、特に家計行動分析の分野において、より深く研究していきたいと考えています。理論と実証の両方を手掛かりに、人々の暮らしの奥にある選択や葛藤を丁寧に読み解き、社会に少しでも還元できる知見を生み出したく存じます。

 

 少子高齢化や所得格差の拡大など、社会には未だ答えのない問いが溢れています。かめのり奨学生として頂いたご支援への感謝を胸に、私は今日も、踏まれぬ道を散歩しながら、その答えを見つけようと、誰かの暮らしに小さな感動を咲かせる花を探しています。