2025年度採用 3名の大学院留学アジア奨学生をご紹介します
2025.06.27
2025年6月、かめのり財団では新たに3名の大学院留学アジア奨学生を迎えました。未来を見据え、志高く研究に取り組み留学生活を送る新奨学生より、自己紹介のメッセージが届きましたのでご紹介します。
宋 在洹 ソン ジェウォン(韓国)
早稲田大学大学院 社会科学研究科地球社会論専攻 修士課程
この度は、かめのり財団の奨学生として採用していただき、誠にありがとうございます。今回の奨学金により、経済的不安を感じることなくこれまで以上に学業へ集中できることは非常に光栄であり、幸運なことであると考えます。
私は平和について学んでおります。特に、現在は北東アジアの安全保障に注目し、戦争回避がどうなされ、今後もいかになされていくか。戦争抑止に必要な条件等の研究に注力しています。北東アジアは常に危機に晒されてきましたが、その都度戦争という最悪の結果を避けてきており、その要因を解き明かすことはこれからの平和維持に必要不可欠なことです。
一方、ここで違和感を覚える方々も多くいらっしゃると思います。我々が住むこの北東アジアは本当に平和なのでしょうか。例として日本を見ても、格差や貧困、エスニシティやジェンダーによる差別など、ここに挙げた以外にも多くの社会問題を日本社会は抱えています。果たしてこのような状態は平和と言えるでしょうか。
ノルウェーの社会学者であるヨハン・ガルトゥングに言わせれば、前者は消極的平和であり、後者のような構造に内在された暴力を解消してこそ積極的平和という「真の平和」が現れます。このような視座は従来の安全保障では忘れられがちな要素ですが、このような視座を持ちつつ、消極的平和を越えた積極的平和の実現に向けた研究を行っていきたいと考えております。
日本は、とても自由で多様性に富んだ人々が住む国のように私には思えます。実際、学部時代から日本に留学している私は日本で様々な人に出会い、その都度今にも続くかけがえのない経験や教えをいただいてきました。今度はかめのり財団メンバーはもちろんのこと、財団を通して新しい出会いや日本という国を見る機会を今後得ることができるという期待へすでに胸が膨らむ思いです。
結びに、このような未来設計が行えるのも、ひとえに協力してくださる財団の皆様のおかげであることは疑いの余地もありません。過去の先輩方がこの奨学金を手に未来へと羽ばたき、社会へと還元しているように、私も未来の後輩たちに向けて目指すべき存在となれるよう、これからも勇猛邁進して参ります。最後になりますが、今回このようなご支援をいただけること、この場をお借りして改めて感謝申し上げます。
Nguyen Thi Thuy Linh グェン ティ トゥイ リン(ベトナム)
東京外国語大学大学院 総合国際学研究科国際日本専攻 博士後期
私は日本語学習者として日本語を学んでいた頃も、日本語教師として働いていた頃も、日本語の助詞やテンス・アスペクト、モダリティ形式の意味や用法の扱いが非常に難しいと感じておりました。しかしながら、難しければ難しいほど、もっと理解したい、もっと深く研究したいという思いが強まり、大学院への進学を決意いたしました。
修士課程では、「現代日本語における『つもりだ』という形式の使用実態」について研究を行い、この形式について一定の理解を深めることができました。今後の博士後期課程の3年間では、引き続き日本語におけるモダリティ形式、特に日本語の教科書では十分に説明されておらず、学習者が習得しづらい表現を中心に研究を進めてまいります。具体的に、指導教員と相談に乗っていただいた結果、「日本語教育におけるモダリティ形式の指導について ―モダリティ形式のパラダイムはどのように教えられているか―」という研究テーマを決めております。また、多くの用例を文脈や談話の中で分析し、学習者が「自然な日本語表現」をより理解しやすくなるような教材や指導法の開発に取り組みたいと考えております。それによって、日本語教育の質の向上や、異文化間における円滑なコミュニケーションの促進に貢献したいと願っております。
この度、かめのり財団の大学院留学奨学生として採用していただいたことは、私にとって非常に貴重な機会です。このご支援を大切に活用させていただきたいと思います。日本での生活費を支えていただけることで、経済的な不安を抱えることなく、研究に専念できる環境が整えられると感じております。
また、研究にとどまらず、文化交流活動やボランティア活動にも積極的に参加し、他の国や地域の日本語関係者とのネットワークを築いていきたいと考えております。特に、かめのり財団が主催されている「日本語人フォーラム」や、奨学生の交流活動には、かめのり家族の一員として、積極的に参加させていただきたいと思っております。異なる世代・文化背景を持つ人々との交流は、自分自身の視野を広げるだけでなく、相互理解と信頼関係を築く第一歩だと信じております。かめのり財団の各活動を通じて、地域・年齢・学問といった枠を超えた交流や共同活動にも関わりながら、限られた留学期間を有意義なものにしてまいりたいと考えております。さらに、今後いつまでもどこにいても、かめのり家族の一員として、誇りを持ちながら活躍してまいりたいと思っております。
朴 亨哲 パク ヒョンチョル(韓国)
横浜国立大学大学院 国際社会科学府国際経済法学専攻 博士後期
皆さま、はじめまして。
私は横浜国立大学大学院国際社会科学府博士課程後期1年の朴 亨哲(パク・ヒョンチョル)と申します。このたび、かめのり財団の奨学生として選出いただき、心より感謝申し上げます。この場をお借りして、私のこれまでの経験や日本留学を決意するに至った経緯、そして現在の研究についてご紹介させていただきます。私は韓国出身の留学生で、現在は日韓間の対立と協力の構造的要因を分析する国際政治学の研究に取り組んでおります。この自己紹介では、プロバスケットボール選手として歩んできた私の第一の人生から、日本で学問に励む第二の人生へと進んだ転機についてお話ししたいと思います。
私は大学卒業後、韓国で12年間にわたりプロバスケットボール選手として活動してまいりました。バスケットボールを始めたきっかけは、8歳のときに観た日本のアニメ『スラムダンク』でした。この作品は私に大きな影響を与え、それ以来、ボールを手放すことはありませんでした。両親の全面的な支援により、バスケットボール部のある学校に進学し、数々の困難を乗り越えながら、ついにはプロ選手としての夢を実現しました。現役時代、大学時代に経験した日韓の大学交流戦は、私の人生に大きな影響を与えました。当時、韓国チームは試合で勝利を収めていましたが、日本の大学選手たちが学業とスポーツを両立させながら、将来を多面的に捉えている姿に強い感銘を受けました。「本当の意味での勝利とは何か?」という問いが心に残り、「いつか日本で学びたい」という思いが芽生えました。
また、私は中学生の頃から政治や歴史に関心がありました。韓国で受けた歴史教育は、日本による植民地支配の被害に焦点を当てたものでした。しかし、その後、多様な資料や経験を通じて、日韓関係は単なる過去の問題に留まらず、現代の外交・経済・安全保障にも深く影響していることを理解しました。こうした背景から、日本で国際政治を学び、日本の学者との対話を通じて、日本社会の視点や議論にも直接触れたいと強く思うようになりました。それは、日韓関係に対するよりバランスの取れた理解と分析を可能にしてくれました。引退後、遅い年齢での留学を決断した私にとって、学問に費やす時間は非常に貴重です。そのような時期に、かめのり財団の奨学金は経済的支援を超えて、精神的な安定をもたらしてくれました。異国での生活には孤独やさまざまな困難が伴いますが、財団の一員として同じ道を歩む仲間たちとのつながりは、大きな励ましと勇気になっております。
私の研究の目的は、日韓関係における対立と協力の変動要因を解明し、両国がより良い未来を築くための懸け橋となることです。この夢を実現する過程において、かめのり財団とのご縁は非常に意義深く、心強い存在だと感じております。
まだ学ぶべきことは多くありますが、自分らしさを大切にしながら、これからも着実に歩んでまいります。今後とも、かめのり財団の一員として誠実に努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。