奨学生 10月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年10月)

 

筑波大学大学院人間総合科学学術院教育学学位プログラム

博士後期課程(D2)

甄 卓榮 (ケン タクエイ)

                  

1.研究について

 

 今月は、研究に大きな進展がありました。現在、今年実施した高校生アンケート調査にもとづき、高校生の国家に対する事実認識(国家認識)と価値判断(国家の正当化・相対化)の2 点について分析を進めていますが、今月はそれぞれの分析手法を具体化し、より明確な知見を得ることができました。

 

 9 月末の教育学域指導会でいただいた先生方のご意見を踏まえ、因子分析の手法を調整した結果、より明確な因子構造が得られ、論文の説得力が高まったと感じています。この価値判断に関する論文をもとに、来月の教育社会学会(大阪)と社会科教育学会(水戸)で発表を予定しています。骨子は同じですが、それぞれの学会の特性や研究者の関心に沿って内容を調整するつもりです。

 

 また、自身の研究が社会学と(教科)教育学の双方にまたがっていることを、最近改めて強く意識するようになりました。もともとの問題関心は社会学的、すなわち現実社会の構造的問題を捉えるために、まず学校教育の「現状」や生徒の実態を明らかにしたいという点にあります。一方で、研究の対象が学校教育現場であり、教育者の「意図」も射程に入れているため、教育学の問題意識とも接続しています。両方の視点を持つことはオリジナリティといえますが、それぞれの学問領域の専門家に対し、どのように研究の意義を伝えるかが重要な課題です。

 

 月末には、もう一方の論文(事実認識の方)も概ねまとめ、研究室のゼミで発表しました。分析手法にある程度習熟してきたこともあり、比較的順調に執筆を進められました。修士段階で学んだ政治学(とくに国家論)を理論的基盤として丁寧に振り返り、アンケートデータにもとづいて、生徒にとって「国家とは何か」「国家はどこにあるか」「国家を動かしているのは誰か」という認識を明らかにしました。テキスト分析と統計手法を適宜用いた結果、予想以上に明確な結論を導くことができました。先生の意見を受け、この研究の教科教育的な価値を整理したうえで、優先的に投稿する方向で検討しています。

 

 また、授業見学を継続しながら、授業の進度に合わせて中間アンケートも実施しました。前回の調査結果をもとに作成した短縮版ですが、生徒の意識変化や授業に対する態度を把握することができました。個々の生徒の変化を追うことで、授業との関係性について検討を進めています。

 

2.生活について

 

 10 月から大学の秋学期が始まり、友人とキャンパスで会う機会が増え、とても楽しい月でした。平日のサークル活動は授業の関係で減りましたが、週末の練習を大切にしています。

 

 秋に入り雨の日が多かったものの、晴れた日を狙って小旅行にも出かけました。発表の翌日には友人と日光を再訪しました。ちょうど紅葉が見頃で、軽い登山をし、山奥で一泊しました。日光には何度も訪れていますが、広大で季節によって表情が変わるため、個人的にとても好きな観光地です。今回は林道を抜け、鬼怒川上流の宿に泊まりました。秋の夜の渓谷は驚くほど静かで、鳥や虫の声さえ聞こえませんでした。宿の外に出て空を見上げると、銀河が降り注ぐように広がり、思わず息を呑む美しさでした。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年10月)

 

 

立教大学大学院社会学研究科社会学専攻

博士後期課程(D3)

具 弦俊 (グ ヒョンジュン)

                    

 この9月は、研究と私生活の両面で多くの出来事がありました。修士論文の準備を進める中で博士課程進学への思いが一層強まり、同時に仲間との時間を通じてリフレッシュする大切さも実感しました。

 

1.研究について

 10月は、博士論文の基礎論文に関する中間発表会が行われ、指導教員及び副指導教員から多くの建設的なコメントをいただいた。特に強調された点としては、現在設定している研究テーマがやや広範にわたりすぎているため、今後はテーマをより絞り込み、焦点を明確にした上で、各章でより深い考察を展開していく必要があるということであった。また、博士論文で使用を予定しているデータが、執筆時期とのタイムギャップの関係で適切ではない可能性があるため、必要に応じて他の統計資料やデータセットを検討すべきとの指摘もあった。さらに、比較の視点として他国との分析を組み込むことで、より多角的で国際的な視座からの議論が可能になるという提案もあり、視野を広げる必要性を再認識した。これらのコメントを受けて、今後の博士論文の構想を柔軟に見直す必要があると感じている。実際、既存の構成に固執するのではなく、研究の進捗状況やデータの可用性を踏まえて、構成・章立て・仮説の設定などを調整していく姿勢が求められていると痛感した。

 

 また、今月は11月に予定されている学会発表の準備も同時に進めている。発表に向けて、既存のデータ分析を一から再検証し、より明確で説得力のある結果を導き出すことに注力した。発表資料についても、今回の分析結果に基づいて新たに構成を考えており、内容の精査と視覚的なわかりやすさの両立を目指している。学会発表まであと2週間ほどとなっているため、できる限り早めに資料を仕上げていく予定である。11月以降は、発表を終えた上で、いただいたコメントを博士論文の構成修正にも反映させる予定であり、今後の研究の軸をより明確に固めていきたいと考えている。

 

2.生活について

 

 10月は気温が急激に下がり、一気に秋から初冬に近づいたような体感のある月だった。そのため、体調管理にはより一層の注意を払っており、特に朝晩の冷え込みが強くなってきたことから、衣類や室内の暖房対策を意識的に行っている。また、健康管理の一環として、年末まで禁酒することにした。持病の管理と日々の生活リズムを整えることが目的であり、今のところ大きな無理なく継続できている。

 

 睡眠については、学期中ということもあり、希望するほどの十分な睡眠時間を確保するのは難しいが、それでも以前よりはやや安定している。特に論文執筆や発表準備が重なる週は睡眠時間が削られる傾向にあるため、就寝時間を固定するなどの工夫を通じて、少しでも質の高い休息を取るよう心がけている。幸い、現在のところ体調に大きな問題はなく、研究と生活のバランスを取りながら過ごせている。大きな出来事や変化はなかったものの、寒さが本格化するこれからの季節に備え、引き続き無理のない範囲での生活リズムと健康の維持に努めたいと考えている。