奨学生 6月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年6月)

 

                    

早稲田大学大学院社会科学研究科地球社会論専攻

                                                                                                                  修士1年(M1)

宋 在洹(ソン ジェウォン)

 

 

1.研究について

 

 修論のテーマ設定のために、先行研究収集に費やした1カ月だった。沢山の本を読んだり、シンポジウムに参加したり、指導教員を始めとする様々な人々と意見を交わした。

 

 知らなかったことを知ることができるというのはいつも自分にとってワクワクする出来事である。もちろん、自分の無知や扱う分野の壮大さ、問題の大きさと途方もなさに少し打ちひしがれてしまうこともある。それでも、場所も時間も遠く離れた先人たちが自分と同じように「平和」な世界を追い求めて考えた理論やその考えの足跡を辿ることは自分が一人ではない感覚にさせてくれるし、知らなかった世界をこれからは自分も知ることができるという期待感に駆られるため、知らないことを知ることが自分はとても好きだ。

 

 今月は正にそれを体現したかのような日々を送った。前述のとおり、先行研究を見ていくと自分が知らなかったことばかりでとても刺激が得られるし、これから自分が後の世代に微力でも何か知らなかったことを教えられるような研究がしたいというモチベーションにもつながった。

 

 研究の道は始まったばかりで、先は長い。挫折することや、無力感に苛まれることもあるかもしれない。そんな時は、今抱いている上述の様な初々しい気持ちを忘れず、希望を持って果敢に挑んでいきたい。

 

2.生活について

 

 今年の六月は梅雨まではいかないが、ちらほらと雨の日が目立つ月だった。雨が嫌いな私にとってはありがたかった。

 

 雨の日はどうしても気分も憂鬱になってしまう。雨だとせっかくの休日も外出先が限られてしまうため、残念な気持ちになってしまう。

 

 しかし、世の中には、雨の日が好きだという人もいる。理由は様々だろうが、少なくとも天気をどうにかすることはできない以上、雨の日を楽しめる感性を持つことは重要だし、素敵なことのように思える。

 

 そこで、今月は自分なりに雨を好きになる努力をしてみた。その結果、二つの楽しみ方を習得した。一つ目は、雨の日だからこそ外出することだ。雨の日に外出する人は少ないため、学校の図書館も席が空いているし、行きたかった人気のカフェもすんなり入れたりする。二つ目は、次の晴れる時を楽しみにすることだ。雨上がりの空や翌日の晴れた青空は、晴れが続いている日の空よりも綺麗に見える。そんな景色を待ち望む感覚が持てると、自然と雨が憂鬱で不幸な時間ではなく、後の楽しみのために必要な我慢のように思え、頑張れるのだ。

 

 この先つらいことがあったとしても、このような感性で乗り越えていきたいと思える思考体験だった。

 

 

 

 


 

 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年6月)

 

 

大阪大学大学院人文学研究科言語文化学専攻

博士後期課程(D2)

NGUYEN THI LINH (グェン ティ リン)

 

 

1.研究について

 

  先月は、国際的な学術誌からのリジェクトを受けて、小学校における移民児童の学習過程上の利点と困難に関する論文の修正に取り組みました。原稿を再検討し、関連研究を読み直すとともに、共著者とともに専門用語の不正確さや論文構成における一貫性の欠如を分析しました。その結果、いくつかの課題が明確になり、改善を加えました。近いうちに他の学術誌へ再投稿を予定しています。最初の段階でのリジェクトは落胆する経験ではありましたが、自身のアカデミックライティング能力と批判的思考力を見直し、向上させる貴重な機会となりました。

 

 並行して、博士論文の方法論章の執筆にも本格的に着手しました。私の研究では「ナラティブ・インクワイアリ」という質的研究手法を用いています。ナラティブ・インクワイアリは、個人の語りを主要なデータとして扱い、そこに含まれる社会的・文化的・歴史的な意味層を解釈することを目的とする手法です。この手法を採用することは、単なる分析枠組みを選ぶというだけでなく、主流の教育システムにおいて見過ごされがちな声に光を当て、倫理的な実践でもあると考えています。

さらに、新たな研究プロジェクトとして、教育分野におけるエージェンティックAIの役割に関する研究構想も始動しました。このテーマに向けて、社会技術理論に関する文献を精読し、学校教育の場における人間・技術・組織の相互作用について理解を深めています。現在はまだアイデアの構想段階にありますが、この研究を通じて、エージェンティックAIをめぐる能力・倫理・教育における役割という社会的問いを結びつける新しいアプローチを模索していきたいと考えています。

 

2.生活について

 

 このところ、目の疲れを感じることが多くなってきました。特に夜10時以降になると、目が非常に疲れてしまい、パソコンの画面を見るのが難しくなる状態が続いていました。そのため、自宅近くの眼科クリニックで診察を受けたところ、ドライアイに加え、左右の近視の度数差が大きいことが原因であると診断されました。点眼薬を処方され、使用してみたものの、症状はあまり改善されませんでした。

 

 一方で、日光の下で読書をしているときには、目が楽に感じられることに気づきました。この経験から、日光不足が目の疲れの一因ではないかと考えるようになりました。これまで机は部屋の奥にあり、主に照明に頼って作業をしていたのですが、思い切って机を窓際に移動し、日中はできる限り自然光のもとで勉強するようにしました。その結果、わずか1週間ほどで目の疲れが明らかに軽減されました。窓の外に広がる青々とした菜園を眺めながら勉強する時間は、非常に清々しく、よい気分転換にもなっています。

 

 また、私の菜園も順調に育っています。最近は気温の高い日が続いていますが、適度な雨のおかげで野菜の生育状況は非常に良好です。中でも、ツルムラサキの成長が著しく、毎日の観察が楽しみとなっています。ただし、ツル性植物であるため、支柱がなければ自然な成長が難しいという課題もあります。葉の生育を優先して摘芯(先端を切る)すべきか、それとも本来の性質に従ってツルを伸ばすべきか、悩みました。最終的には、それぞれの植物の「天性」を尊重するという考えに至り、支柱を立てられる場所ではツルを伸ばし、それが難しい場所では摘芯して育てることにしま した。以下の菜園の写真です。