奨学生 1月の月次レポートを掲載しました
2025.02.10
かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。
かめのり大学院留学アジア奨学生
月次報告レポート(2025年1月)
お茶の水女子大学大学院・比較社会文化学専攻
博士二年
曹怡(ソウ イ)
年末年始は体調を崩し、冬休みはずっと家で休んでいた。結局、検査を受けることなく、インフルエンザだったかどうか確認できないまま治った。論叢投稿用の論文を提出した後、この冬休みにはようやく気になっていた小説と先行研究を読み終えることができた。次の発表テーマをなかなか絞り込むことができず、いろいろな先行研究を精読しながら、何か良いアイディアが浮かぶのを期待している。なお、Netflixでガルシア・マルケスの代表作『百年の孤独』に基づいたドラマが配信されており、前半をすべて鑑賞した。マジックリアリズムの手法で描かれたこの名作は、小説の世界をそのまま映像で再現するのは難しいだろうと予想していたが、ドラマの制作は非常に質が高い。特に、村で起きる不眠症のエピソードや、主人公アウレリャノ・ブエンディア大佐が革命軍に参加する印象的な場面などに感心した。また、同じガルシア・マルケスの傑作『族長の秋』も読んだ。悪行を繰り返す独裁者の哀しい独白を通して、その生涯と独裁政権の終焉が描かれている。独裁という政権自体への思索や、それを担う人間性について深く考えさせられる内容だった。この作品は段落のない長文と「螺旋状」と形容される文体で書かれているが、不思議と読みづらさを感じることなく、最後まですらすらと読み終えることができた。
一月十日・十一日に今年のかめのりフォーラムに参加した。奨学生の仲間たちと最近の状況について語り合い、また、新しく出会った方々と交流することができ、非常に有意義な時間を過ごした。特に、田村先生のスピーチ「若者がつくるこれからの多文化共生」は大変勉強になった。高齢化と少子化が進む社会において、未来への道は多文化共生社会を築くことにあると強く感じた。それは政府が取り組む政策だけでなく、希望ある未来を担う若者達の協力も欠かせないものであろう。留学生として日本で暮らしている私にとっても、このお話は非常に興味深く、思わず様々なことについて深く考えさせられた。立食会で田村先生に直接意見を伺うことができた。また、康本さんから貴重なお話をいただき、私も将来、社会に貢献できる一員になりたいと思っている。
そのほか、下旬に学校で行われた国際日本学の講演会に参加した。今回は、フランスにおける『枕草子』の翻訳と研究というテーマについて、大変勉強になった。『枕草子』は、約100年前に印象派の文学として初めてフランスに紹介された。その後、フランス語訳された作品は、今では通販のベストセラーに入るほどの人気を誇っていると知り、非常に感心した。中国でも、多くの書店の日本文学コーナーには、分厚い『枕草子』の全訳版が目につく場所に置かれており、日本に興味を持つ方々の愛読書になっている。今回の講義では、フランスのオドリ先生から翻訳におけるさまざまな課題についてお話を伺い、今まで気づかなかった点にまで考えを巡らせる機会となった。たとえば、作中に登場する地名の翻訳の難しさは言うまでもなく、一人称の解釈と翻訳もまた、大きな課題であると感じた。日本語における一人称の省略や曖昧化は、日本語特有の特徴であり、この問題は古典作品を中国語に翻訳する際にも必ず直面するものだと思う。さらに、人称の翻訳問題に関連して、『枕草子』という作品そのものや、清少納言に対する海外での受容イメージが変化するという点についても、大変興味深く感じており、このようなお話を伺えたことで、私自身の研究ともつながる新たな視点を得ることができた。
月中旬の週末に友達と香港・マカオへ旅行に行き、現地の美味しい料理や、香港の「百万ドルの夜景」と称される絶景を楽しんだ。特に、湯葉と銀杏で作られた糖水を初めて食べ、その想像もつかない食材の組み合わせが驚くほど美味しくて感動した。現地の広東語は全く聞き取れなく、その独特な文化にはやはり大きな魅力があると感じた。
一月二八日は中国の除夕夜(大晦日)で、家で上海の伝統料理である卵餃子や白菜と豚肉餡の春巻を作り、少しだけ郷愁を慰めることができた。
香港の夜景(筆者撮影)
春節の日に作った料理(筆者撮影) 現地の糖水(筆者撮影)
かめのり大学院留学アジア奨学生
月次報告レポート(2025年1月)
立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科 身体運動科学領域専攻
博士前期課程(M1)
I Wayan Yuuki (イ ワヤン ユウキ)
1.研究内容について
今月は、修士1年の集大成ともいえる研究中間報告会が1月30日に開催されます。この報告会に向けて、現在、要旨やプレゼンテーション資料の作成に注力しています。この機会を通じて、研究の進捗を整理し、修士論文執筆に向けた具体的な目標を明確にしたいと考えています。
これまでに主要な実験や研究を概ね終えることができ、順調に進んでいる手応えを感じています。4月から始まる修士2年では、これらの成果を学会発表や論文投稿を通じて広く発信し、学問や社会への貢献に繋げたいと考えています。
修士論文は、2つの投稿論文を基に構成する予定です。研究課題Ⅰ、Ⅱ、そして総合討論を中心に据え、体系的で一貫性のある内容を目指します。この1年間の取り組みを振り返りつつ、周囲への感謝を忘れず、研究者としてさらに成長できる1年にしたいと強く思っています。
2.私生活について
新年のおみくじで「末吉」を引きましたが、そこには【幸】「龍の天上する如き幸運きたる」との一文があり、とても心が弾みました。この言葉に背中を押され、今年のスローガンを「待つだけでなく、果敢に挑戦する」と決めました。
来年の今頃には進路を決める必要があります。現時点では博士課程への進学も視野に入れていますが、研究内容の方向性や資金の確保、この進路が本当に最善なのかといった多くの課題(悩み)に直面しています。それでも、迷いや葛藤は成長の糧になると信じています。「龍の天上する如き幸運きたる」を信じ、その幸運をつかむために積極的に行動していきたいと思います。
今年はすでに、多くの素晴らしい機会に恵まれています。1月にはかめのりフォーラムに参加し、多くの刺激を受け、自分の成長につながる貴重な体験を得ることができました。また、3月には札幌医科大学で開催される勉強会に参加する予定です。この勉強会には、循環系、脳血流、認知機能の専門家が集まり、新たな研究のヒントや人とのつながりを得られることを楽しみにしています。早速、新しい名刺も作成し、札幌ということもあり、大変ワクワクしています。
さらに、7月にはイタリアで開催されるヨーロッパスポーツ科学会で研究発表を予定しています。そして9月には、立命館大学で開催される日本体力医学会でも発表する予定です。このような充実したスケジュールに、感謝の気持ちでいっぱいです。これらの機会をいただけたのは、かめのり財団をはじめとする周囲の方々のサポートのおかげだと改めて感じています。今年1年、「龍のように昇る幸運」の言葉を胸に、果敢に挑戦し、未来の自分に胸を張れるような1年にしていければと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。