グローバル時代に期待される人材とは 〜地域創生のために〜

 2018年6月、カリフォルニア大学サンディエゴ校の當作靖彦教授による「グローバル時代に期待される人材とは〜地域創生のために〜」というタイトルの講演会が福井大学にて開催されました。

 

 かめのり財団では、カリフォルニア大学サンディエゴ校の當作靖彦教授を米国より招聘し、6月26日(火)には福井大学教育学部附属義務教育学校で中学生230名を対象に、翌27日(水)には福井大学において講演会を実施しました。福井大学では学生のみならず、学長、副学長、学部長なども参加され、アメリカ在住40年、日本を始めアジア各国でも活躍されるグローバルリーダーの一人、當作教授の話を聞いていただきました。
 當作教授は、カリフォルニア大学での最近の話題から話を始めました。医学部では、医者を育てる教育法が非常に変わってきているそうです。というのも今は、手術の80%をロボットがする、まもなく100%になるのだから手術の練習をする必要がない。また「ナノ分子」を血管の中に入れると、それが体の中を巡りながらいろいろな情報を集めてきて、血管のこのあたりが詰まり気味になっているなんてことがわかるので、聴診器を当てて診断をする必要がなくなる。むしろ倒れる前に治療ができるようになるのだそうです。その技術はGoogleがもっていて、カリフォルニアではすでに実験が始まっているばかりか、やがては3億の米国人にナノ分子を入れて膨大なビッグデータを取ろうとしている。だから、これからの医者は集まったデータからそれを統計的に処理し分析をする、そんな数学的な力の方が重要になるというのです。つまり、世界が変わればそこで働く人たちに必要な資質も変わってくるというわけです。
 21世紀は最も象徴的に「グローバル時代」といわれていますが、それはインターネットなどの技術の発展によるもので、今後はますますテクノロジー優先社会となり、社会は急速に非常に大きく変化してゆくと、事例を挙げながら説明されました。
 カリフォルニアではすでに車の無人運転が始まっているように、AI(人工知能)の発達はめざましく、2045年にはAIが人間の知能を超えるとさえいわれている。インターネットによる情報化の進展もすさまじく、人類の歴史が始まってから2003年までの全世界の情報量が500億GBなのに、今はたった1分間で500億GBの情報量が飛び交っている。しかも情報量の75%は個人が発信しているので、世界中の個人同士がつながりやすい時代になっている。さらにGoogleやカード会社の検索履歴などのビッグデータを分析することで、誰が何にお金を使うのかなどの膨大な個人情報が集積され始めています。
以上のような技術の進化によって、2030年には、今の職業の80%をAI、ロボット、コンピューターがするようになる。しかし一方で、1年に7~8億円も稼ぐユーチューバーが誕生したように「情報を見つけ出して分析し、それを効果的かつ効率的に使い変化を生み出す、これが21世紀のインテリジェンスだ」といわれているそうです。
 では「21世紀を生き抜くために必要なスキルとは何か」、これについてはOECDをはじめ、各国でも研究され公表されていますが、中でももっとも重要な能力として次のように語り、講演の締めくくりとされました。21世紀の厳しい時代を切り開くイノベーションを興すためには、優秀な人材だけを登用するよりも、「多様性」=多様な文化、宗教、価値観等をもった人たちで協働していくことが大きなカギであり、そのためには「共感力」=自分とは全く異なる人の考え、気持ちを理解する力が最も大切だ、と言うことでした。

報告:悠プランニング 山本加津子
 
 
當作 靖彦(とうさく やすひこ)
カリフォルニア大学サンディエゴ校教授。言語学博士。グローバル政策戦略大学院外国語プログラムディレクター、学部日本語プログラムディレクター。米国ナショナルスタンダーズ理事会日本語代表、米国日本語教育学会元会長など、米国における日本語教育の要職を歴任。著書に「NIPPON3.0の処方箋」(講談社)など多数。